「SUPERCOMM 2001」で6月4日,米シンギュラ・ワイヤレス(Cingular Wireless)と米ベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)の2社のCEOを迎え,「Wireless Focus」と題するセッションが開かれた(写真上)。シンギュラとベライゾンは,加入者数で米国第1位と第2位の携帯電話事業者である。

 まずシンギュラのステファン・カーターCEO(写真下・右)は,1990年代前半の映画を数点紹介した。その中で,携帯電話はバッテリが数時間で切れてしまったり,接続が不安定で何度も「ハロー」と聞き返してしまう代物であったことを指摘。現在では大幅に改善されたことから,「日本や欧州の方が携帯電話を使ったデータ通信利用が進んでいると言われるが,長い目で見れば大した問題ではない。技術的なことはいずれ追いつく」と続けた。

 また,カーターCEOはWAP(wireless application protocol)を使ったブラウザフォン・サービスが普及していないことについて,「パソコンを使ってインターネットを使っている利用者に,過大な期待をさせてしまった」と分析。しかし,データ通信速度の高速化やパケット通信の導入によって,「いずれ携帯電話は通話用途以外にも使われるだろう」との見解を示した。

 一方,ベライゾンのデニス・ストリグルCEO(写真下・左)は,第3世代携帯電話(3G)の将来展望に不安の声が上がっている状況に言及し,「3Gは過度な期待がかかり過ぎた。業界全体に罪がある」と断言した。あと2~3年は,携帯電話の利用の中心は通話であると見ており,「ユーザーは通信品質のさらなる向上や料金プランの簡素化などを切望している。携帯電話を使ったデータ通信の普及は,まだ機が熟していない」と述べた。

 一方でストリグルCEOは,「携帯電話のモビリティは強力な武器。将来的には,インターネットやコミュニケーションをいつでもどこでもやり取りする中心にはワイヤレスが存在し,その環境で生活様式が形作られるようになる」と携帯電話が中心となる未来像を語り,セッションを締めた。

 シンギュラもベライゾンも,米国での携帯電話を使ったデータ通信の普及にはまだ時間がかかるとしながらも,パケット通信サービスの導入を着々と進めている。特にベライゾンは力を入れており,すでに最大2.4Gビット/秒のパケット通信の試験を終えている。