NTTは4月27日,サーバーを介さない通信形態「P2P」(peer to peer)の新技術「SIONet」(semantic information network,意味情報ネットワーク)を開発したと発表した。SIONetは,インターネットなど現在のIPネットワーク上で,パソコンに入っている特定の情報を直接探し出すためのソフトウエア技術。同社はFTTH(fiber to the home)など広帯域のアクセス回線の活用法の一つとして,企業ユーザーやインターネット接続事業者(プロバイダ)に売り込んでいく。

 SIONetは,NTT未来ねっと研究所が開発した新しい情報検索技術。IPルーターやLANスイッチなどで構成するIPネットワークと同様に,SIONetでも,意味情報ルーター(SI-R),意味情報スイッチ(SI-SW)を導入して,目当ての情報を持つパソコンを見つけ出す。SI-Rは意味情報のうち,欲しいもののジャンルや限定情報を示す「語い概念」での検索に,SI-SWは値段など具体的な検索対象を示す「値」のマッチングに利用する。例えば,「ジャズのピアノ曲で価格が3000円以下のCD」なら,「ジャスのピアノ曲」までの検索をSI-Rが担当し,3000円以下のCDの検索をSI-SWが担当する。

 SI-RやSI-SWは,IPネットワーク上の任意のマシンやIPルーターなどで動作させる。ネットワークは元のままで,利用者のパソコンなどの端末に導入するだけで利用できる。

 現在,インターネット上の情報検索は大きく,(1)「Yahoo!」や「Napster」のようにブローカーとなるサーバー上にリンクのインデックスを張る方法と,(2)Gnutellaのように個人のパソコンからインターネット上の無数のマシンに直接聞いて回る方法――の2種類に分かれる。(1)のサーバー利用型は規模拡張性やプライバシーの保護に問題を抱える。また,(2)のような完全なP2P方式は,大量の無駄なトラフィックをネットワークに流すことになるという問題がある。これらに対し,SIONetは分散型データベースであるため,大型のサーバーなどを使わず,さらにルーティング機能により無駄なトラフィックを流さないという特徴を持つ。

 NTTは,SIONetを企業やプロバイダに提案していく方針。また,将来的には個人にも利用できる形にして,双方向で広帯域通信が可能なFTTHなどの重要なアプリケーションとしたい考えだ。