インターネット関連技術の標準化を進めるIETF(internet engineering task force)は米国時間の3月7日,光ファイバで構成する通信事業者の基幹伝送路として,新タイプのネットワーク・トポロジを提案するドラフト仕様を公開した。

 新トポロジの名称は「ハイブリッド・メッシュ-リング・ネットワーク」。光ADM(add-drop multiplexer)装置で構成したリング型(環状)ネットワークの利点である「信頼性」や「堅牢性」と,光クロスコネクトで構成したメッシュ型(網目状)ネットワークの「柔軟性」を兼ね備えるというものだ。WDM(波長分割多重)装置を手かげる米ソレント・ネットワークスおよび米フォタリスの技術者が草案を作成した。

 一般にリング型のネットワークは,伝送路の障害時にう回経路に切り替わる時間が短い。50ミリ秒以内に切り替わることができることが特徴で,VoIP(voice over IP)など遅延に弱いトラフィックに向いているとされている。

 一方,メッシュ型のネットワークでは,障害時などにう回経路に切り替わる時間が長くなる。経路計算に時間がかかるからだ。その半面,新しい機器の追加や経路の設定に自由度があるため,通信サービスを多様化しやすいという利点がある。通信事業者は一般に,リング型のネットワークとメッシュ型のネットワークを組み合わせて基幹伝送ネットワークを構築している。例えば,都市部でリングを構築し,長距離ではメッシュで構築するといった具合である。

 ハイブリッド・メッシュ-リング・ネットワークは,両者を統合するもの。同じ場所でも両方を使えるようにする。具体的には,光クロスコネクトで構成したメッシュ型ネットワークの上位に,仮想的なリング型ネットワークを構築する。ネットワーク運用者は,例えば,リング型ネットワークを構築する際にも,ネットワーク機器同士の接続を取りあえずメッシュ状に接続しておき,機器の設定によって自由にリング・ネットワークを構成することができる。

 これを実現するために,草案では光クロスコネクト同士が波長経路情報をやり取りする際に,仮想リングを識別するための「リングID」もやり取りできるように機能拡張する手法を提案している。ただし現段階では,ソレントやフォタリスがこの手法を自社の光通信機器に採用するかどうかは未定。
(米田 正明=日経コミュニケーション)