NTT東日本とNTT西日本は,2月1日から実施するADSL(asymmetric digital subscriber line)モデムの売り切り制導入に伴うADSLサービスの料金変更を1月18日に総務省(旧郵政省)に届け出た。ユーザーは,ADSLモデムを買い取ることで,従来よりも月額500~550円安く,ADSLサービスを利用できるようになる。

 東西NTTは,料金変更でADSLモデム機器利用料と屋内配線利用料を新設した。東西NTTの地域IP網を利用する「フレッツ・ADSL」の電話共用メニューの場合で,機器利用料は月額490円,屋内配線利用料は月額60円。ユーザーは,ADSLモデムを買い上げ,屋内配線を自ら保守することで,これらの利用料を支払う必要がなくなる。このため,従来よりも550円安い月額4050円でフレッツ・ADSL(電話共用)を利用できる。

 フレッツ・ADSLで電話を共用しないメニューの場合は500円引きの月額5700円。地域IP網を利用しないNTTの各収容局までの「ADSL接続サービス」も,電話共用の有無によって550円または500円安く,月額3250円または4900円に改定される。

 ADSLモデムの価格は未定だが,NTT東日本によれば「約2万円」,NTT西日本によれば「2万円台のできるだけ安い値段」の見通し。ADSLモデムを販売するのは,当面東西NTTの2社だけで,モデム・メーカーによる直販は「予定していない」(NTT東日本)。利用地域によって利用できるADSLモデムの機種が異なるため,東西NTTがユーザーに機種を直接指定して販売する。

 ADSLモデムの売り切り制導入は,ADSLの普及を促進するために,総務省が急遽,東西NTTに求めたものである。これは,売り切り制導入に伴うADSL回線工事の制度変更で,ある程度の効果が期待できそうだ。制度変更とは,ADSLモデムの設置をユーザー自らが実施できるようになること。買い取り/レンタルいずれの場合でも,ユーザーはNTTの設置工事の順番を待つ必要がなくなる。

 ただし,料金面でのユーザーのメリットはあまりなさそう。モデム価格が2万円と高価なため,月550円の減額ではユーザーが元を取るために3年以上の利用が必要になるからだ。今後,モデム価格の低下が見込まれることや,転居の場合にはモデムが使えなくなる危険性があることを考えると,ユーザーが積極的にモデムを買い取るようになるとは考えにくい。

(安井 晴海=日経コミュニケーション)