NTTドコモは1月15日に,PHSを利用した音楽配信サービス「M-stage music」を全国で一斉に開始する。ユーザーは,専用のPHS端末「Picwalk P711m」(写真)を使ってサーバーから楽曲データをダウンロードし,端末に標準搭載された再生機能を使って音楽を聞く。NTTドコモは,2000年5月から10月末まで音楽配信サービスのモニター実験を実施しており,今回はこの結果を踏まえて本サービスの提供に踏み切った。

 PHS向けの音楽配信サービスは,競合のDDIポケットが2000年11月から提供中。しかしNTTドコモは,「魅力的なコンテンツを取りそろえて差異化を図る」(MMビジネス部)と,強気の姿勢を見せる。楽曲データを提供するコンテンツ事業者はエイベックスやポニーキャニオンなど15社。試聴用を含めて500曲程度を用意する。コンテンツ事業者としてソニー・ミュージックエンタテインメントなども参加を予定しており,NTTドコモは2001年夏ころまでに約3000曲のデータを用意する意向である。

 M-stage musicのサービス基本料は月額200円。ただし5月末までは無料で提供する。楽曲データの情報料はコンテンツ事業者によって異なるが,1曲当たり150~350円程度になる見込み。このほか,1分15円の通信料がかかる。4~5分の楽曲データのダウンロードに必要な時間は64kビット/秒データ通信で10~12分程度。情報料と通信料を合わせると,1曲につき300~530円程度で音楽が楽しめる計算だ。

 対応端末のPicwalk P711mは松下通信工業製。実売価格は4万円台後半になる見込み。音楽配信サービス専用端末で音声通話はできないが,HTMLに準拠した簡易ブラウザを搭載し,iモードの非公式(勝手)サイトを表示できる。楽曲データは,松下電器グループが主導する半導体メモリの「SDカード」に格納する。SDカード上の楽曲データは,パソコンに移して保存することも可能。ただし,パソコン上で音楽を聞いたり,楽曲データをコピーすることはできない。サービス開始当初の対応端末はこの1機種だけだが,4月にもソニー製端末が登場する見込み。ソニー製端末は半導体メモリに「メモリースティック」を使用し,音声通話も可能にするという。

 また,M-stage musicの開始に伴い,これまでモニター実験向けのコンテンツ配信システムの運用を担当していたエアメディアは社名をトライノーツに変更して事業会社となる。資本金も1月12日までに,現在の4億円から9億8000万円に増資。NTTドコモと松下通信工業に加え,新たにソニーと伊藤忠商事が出資する。

 NTTドコモは,2001年5月末に開始する予定の次世代携帯電話サービス「FOMA」でも,M-stage musicをサポートする計画である。11月から提供中のPHS向け映像配信サービス「M-stage visual」も同様。NTTドコモは,二つのPHS向けコンテンツ配信サービスを,ユーザーを次世代携帯電話へ誘導するサービスとして位置付けている。

(安井 晴海=日経コミュニケーション)