2001年2月にも,ADSL(asymmetric digital subscriber line)モデムの売り切り制が始まることが明らかになった。現在のADSLサービスでは,ユーザー宅に置くADSLモデムを事業者が設置し,レンタルする形態を取ってきた。それが今後は,モデムやISDNルーターのようにユーザー自身がADSLモデムを購入し,回線につなげられるようになる。

 郵政省は,ADSLモデムが売り切り制でないことがADSLの普及を妨げている一因であると推測。日米間の協定では本来,通信装置の売り切り制を導入する場合は,海外メーカーに対する市場参入規制とならないように,事業者が通信機器の製造に必要な情報を開示してから6カ月~1年待たなければならない。しかし,ADSLモデムに関してはすでにITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)勧告として国際標準になっているため,こうした弊害はないと判断し,ADSLモデム売り切り制の早期導入に対して米国側の了解を得た。

 NTT地域会社は,ADSLモデムの売り切り制解禁に先立ち,各ADSL事業者が採用しているADSLモデムを元に技術的条件を作成。それを受けて電気通信端末機器審査協会(JATE)が,各メーカーのADSLモデムを審査する。JATEの認定が下りれば,後はモデムやISDNルーターと同様,ユーザーがADSLモデムを購入して回線に接続するといったことが可能になる。

 NTT東西地域会社はこれを受け,「フレッツ・ADSL」などのADSLサービスに端末売り切り制対応メニューを追加する方針を固めた。NTT地域会社は12月26日,フレッツ・ADSLを月額4600円で開始する予定。ADSLモデムの売り切り制のスタートに合わせ,月額4000~4200円程度の対応メニューを用意する。プロバイダに支払う接続料は,これまで通り別途必要である。

 売り切り制で料金が下がるのは,当初の月額4600円の中に400~600円の「ADSLモデム・レンタル料金」が含まれているから。NTT東西地域会社はADSLモデムを購入するユーザーに対しては,このレンタル料を差し引く。

 東京めたりっく通信やイー・アクセスなど,NTT地域会社以外のADSL事業者も,ADSL売り切り制に対応した割安なメニューを用意する見込み。初期費用も安くすると見られる。現状は,ユーザー宅に設置するADSLモデムの接続工事を事業者側で実施している。売り切り制になるとユーザーがADSLモデムを回線に接続できるようになるため,その分の工事費が不要になるからだ。事業者にとっても,限られたマン・パワーを割く必要がなくなり,ユーザー数の拡大が容易になる。

 NTT地域会社はさらに,定額ISDNサービス「フレッツ・ISDN」の値下げも2月に実施する。フレッツ・ISDNは,端末(ターミナル・アダプタやルーター)が元々売り切りだが,料金は月額4500円。速度は最大64kビット/秒である。そのままでは,端末売り切り制を導入するフレッツ・ADSLの月額料金を上回ってしまう。フレッツ・ISDNの値下げは,この逆転現象を是正するのが目的である。NTT地域会社はフレッツ・ISDNの料金を月額3000円台まで引き下げる見込みである。

(吉野 次郎,藤川 雅朗=日経コミュニケーション)