NTT東西地域会社は12月12日,ADSL(asymmetric digital subscriber line)サービス「ADSL接続サービス第1種サービス」を本サービスに移行すると発表した。移行日は12月26日の予定。本サービス化と同時に,サービス・エリアの拡大や地域IP網とつなぐ新サービス「フレッツ・ADSL」の提供を開始する。最大通信速度は,下り(NTT局からユーザー宅方向)が1.5Mビット/秒,上りが512kビット/秒で,試験サービス時よりも高速化する。

 これまでNTT地域会社は,「ADSL接続サービス第1種サービス」を試験サービスとして提供してきた。NTT加入者交換局でインターネット接続事業者(プロバイダ)と接続するアクセス回線で,試験サービス時の料金は電話と多重する場合で月額5100円。これを本サービス時には,月額4000円に値下げする。名称も「ADSL接続サービス」に変更する。

 新サービスのフレッツ・ADSLは,NTT地域会社が都道府県ごとに構築中のIPネットワーク「地域IP網」でADSL回線を中継する。月額料金は電話と多重する場合で4800円。プロバイダが県内のADSL回線を1カ所で収容できるため,プロバイダがADSL対応メニューを提供しやすい。このためADSL接続サービスよりも,フレッツ・ADSLの利用が進みそうだ。また,現在提供中の定額ISDNサービス「フレッツ・ISDN」と比べてもフレッツ・ADSLの魅力は大きい。フレッツ・ISDNは月額4500円とほぼ同額で,最大速度は64kビット/秒と低速である。

 フレッツ・ADSLは,イーサネット回線上からPPP(point-to-point protocol)をやり取りできる「PPP over Ethernet」を活用する。ユーザーは,NTT地域会社が配布するソフトをパソコンにインストールしてユーザーIDとパスワードを打ち込んでプロバイダにアクセスする。IDとパスワードを変更すれば,地域IP網内で接続先を切り替えるため,1本のADSL回線からプロバイダや企業など複数の相手先にアクセスできる。

 提供エリアは,NTT東日本が東京都の中心部12局のエリアで開始。2001年2月までに東京23区全域,3月に東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の主要都市に拡大する。NTT西日本は大阪市の8局のエリアで開始して,2001年2月に大阪市全域とその周辺の一部,3月に政令指定都市などで提供する。提供エリアを拡大することで,NTT地域会社はADSLサービスの普及を一気に加速させたい考え。NTT東日本は,「今後1年間で,100万程度のフレッツ・ADSL回線の販売を目指す」(古賀哲夫営業部長)と意気込む。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)