NTTドコモは11月30日,米AT&Tの携帯電話事業部門であるAT&Tワイヤレスへ約98億ドル(約1兆792億円)を出資することを発表した。同社株式の16%を取得することで合意し,覚書を締結。2001年1月中旬に払い込む。

 AT&Tワイヤレスは2001年中にAT&Tから独立し,NTTドコモがAT&Tワイヤレスの筆頭株主となる見通し。両社は米国で,ブラウザフォン・サービス「iモード」を中心としたモバイル・マルチメディア・サービスの普及やW-CDMA方式を使った次世代携帯電話システムの構築を共同で進める。

 AT&Tから独立した後,AT&Tワイヤレスはモバイル・マルチメディア・ビジネスを展開するための100%子会社を設立。NTTドコモから役員などの派遣を受ける。同子会社は,AT&Tワイヤレスが提供中のWAP(wireless application protocol)方式のブラウザフォン・サービス「Pocket Net」事業を移管される。

 さらにAT&Tワイヤレスは2001年中に,自社の携帯電話サービス・システムにパケット通信機能「GPRS」(general packet radio service)を追加し,これに合わせてPocket Netにiモードのサービス・ノウハウを反映する計画である。また,iモードとPocket Netの両方に対応したデュアル・ブラウザ端末を日米で発売し,コンテンツの共有も図る。デュアル・ブラウザ端末を導入するのは,Pocket NetはHTML(hypertext markup language)のサブセットを採用するiモードとはコンテンツ記述言語が異なるため。

 またNTTドコモは同日,台湾の携帯電話事業者であるKGテレコムの株式の20%を取得することで合意し,調印した。株式取得額は約171億台湾ドル(約598億円)で,2001年1月下旬に支払う。KGテレコムとも共同で,iモードをはじめとしたモバイル・マルチメディア・サービスとW-CDMA方式の次世代携帯電話サービスの台湾での早期普及を目指す。なお税金対策などの理由から,NTTドコモはイギリスに持ち株会社を設立し,この新会社がAT&TワイヤレスとKGテレコムの株式を保有する格好となる。

 KGテレコムはすでにGPRSを使ったWAP方式のブラウザフォン・サービスを提供中。2001年中にもiモードとのデュアル・ブラウザ端末を提供し,コンテンツの共有を進めていく可能性がある。NTTドコモとKGテレコムは,ブラウザフォン・サーバーの運用やコンテンツの開発などを手がけるジョイント・ベンチャーの設立も検討している。

 NTTドコモは,AT&TワイヤレスとKGテレコムの両社が,W-CDMA方式を使った次世代携帯電話システムを早期に構築することを支援する。NTTドコモとAT&Tワイヤレスは,早ければ2002年にも米国内でサービスを開始したいと表明した。

(杉山 泰一=日経コミュニケーション)

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