インターネット関連技術の標準化を進めるIETF(internet engineering task force)は11月15日,IPネットワーク上で「フリー・ダイヤル」や「ダイヤルQ2」など電話の高度サービスを実現する新プロトコルの草案を作成した。新プロトコル名は「SS7-SUA」(SS7 SCCP-User Adaptation Layer)である。

 IPバックボーンを使ってVoIP(voice over IP)サービスを提供する通信事業者が,既存の電話サービスが提供していた各種高度サービスを提供できるようになる。SS7-SUAは,通信事業者の電話網の制御信号「No.7共通線信号」をIPネットワークで転送するためのプロトコル群「sigtran」(signalling transport)の中の一つという位置付けだ。

 IP電話サービスは一般に,IPネットワークと電話網を相互接続する「VoIPゲートウエイ」と,IPネットワーク上の呼制御処理を受け持つ「コール・エージェント」と呼ぶサーバーを連携処理させることで実現する。sigtranは,共通線信号網から送られてきた共通線信号を,コール・エージェントに転送するプロトコル。

 共通線信号は,提供する機能ごとに複数のプロトコルで構成している。例えば,通話回線の設定や切断などを実現する「ISUP」や信号パケットを転送する「MTP」,高度サービスなどを実現する「SCCP+TCAP」などである。MTPに相当するレイヤー4プロトコル「SCTP」(stream control transmission protocol)は既に,2000年10月に正式標準として完成済み。今回のSS7-SUAは,SCCP+TCAP相当の仕組みを組み込んだものである(図)。

 新草案は,カナダのノーテル・ネットワークスやフィンランドのノキア,独シーメンスなどの技術者が作成した。ただし,まだ草案の段階であり,これらのメーカーが自社製品に採用するかどうかは未定である。

(米田 正明=日経コミュニケーション)