東京通信ネットワーク(TTNet)が12月中旬,電子メールやWebアクセスに利用できるPHS端末「AJ-51」を発売する(写真)。AJ-51は,アステル・グループが同時期に提供を始めるWebフォン・サービス「ドットi」に対応したPHSの第1弾。ドットi対応PHSは,NTTドコモをはじめとした他の携帯電話・PHS事業者のWebフォン・サービス対応機と比べ,端末設定の自由度が高く,パソコンに近い使い方ができる。“自由度が低い”既存のWebフォン・サービスの在り方に一石を投じる製品と言える。

 AJ-51は,日本無線が開発した。移動電話機としては大型の,最大100字を表示可能なモノクロ4階調ディスプレイを搭載する。利用可能な電子メールの文字数は,受信時が全角で最大5000字程度(添付データを含めて最大16Kバイト)までで,送信時は2500字程度まで。価格は現時点では未定である。

 ドットiの特徴は「オープン性」にある。例えば,他のWebフォン・サービスでは,インターネット接続事業者(プロバイダ)は選べない。必ず移動電話事業者自身のインターネット接続サービスを利用する。一方,ドットiでは任意のプロバイダを選択できる。AJ-51には,接続先として最大三つのプロバイダを設定する機能がある。また,アステル専用のインターネット接続サービスにオンライン・サインアップをする機能も持つ。ドットiは,POP3(post office protocol version 3)とSMTP(simple mail transfer protocol)に対応しているので,ユーザーが選んだ任意のプロバイダのメール・アドレスを利用できる。

 また,ドットiで用いるコンテンツ記述言語は,W3C標準であり,HTML(hypertext markup language)との互換性がある「C-HTML」に準拠する。このため,2万サイト以上あると言われる,NTTドコモのiモード向け非公式サイトを利用できる。iモード向けコンテンツ記述言語も,C-HTMLとほぼ同じ仕様だからだ。C-HTMLに準拠することは,HTMLに関する知識がある人なら簡単にコンテンツを作成できることをも意味する。ドットi向けのC-HTMLはいくつかのタグが追加されており,詳細はアステル・グループのホームページ上で公開している。

 このようなパソコン・ベースのインターネットに近い使い勝手を実現するドットiは,iモードのような従来のWebフォンの在り方に一石を投じる。実際,郵政省が取りまとめる「次世代移動通信システム(IMT-2000)上のビジネスモデルに関する研究会」で,今後のWebフォンの在り方について活発な議論が交わされている。議論の中心は,「端末の提供からブラウザやプロバイダ,コンテンツの選定まで移動電話事業者が一貫して行う現行サービスを,もっとオープンなものにしていくべきかどうか」という点。このため,TTNetが発売するAJ-51は,Webフォン・サービスの将来像を占う試金石の一つとして注目される。