衛星やxXDSL(digital subscriber line)回線を利用した家庭向けのコンテンツ配信サービスの提供を視野に,日立製作所が10月26日,スイスのファンタスティックとの提携を発表した。両社は一般家庭に向けに,映像や音楽,テキストなどさまざまな種類のコンテンツをパソコンやセットトップ・ボックスなどに配信する「DTH(ダイレクト・ツー・ホーム)マルチメディア・ブロードキャスティング・サービス」の実現を目指す。

 ファンタスティックは,マルチメディア・コンテンツの配信技術を持つ企業。コンテンツ自体の管理のほか,配信スケジュールや帯域の管理,配信先の指定などを可能にするソフトウエアのほか,米インクトゥミとの提携によりキャッシュ技術も持つ。すでに英国のBTが,ファンタスティックのソフトを使ったサービスを提供中で,ドイツ・テレコムやオーストラリアのテルストラなど通信事業者も同様のサービスを計画している。

 日立の目的は,大容量コンテンツの配信をASP(application service provider)サービスとして提供すること。そのために,日立の持つ(1)データ・センターなどの各種プラットフォーム,(2)暗号化や圧縮,透かしなどのコンテンツ・フォーマット──などの技術とファンタスティックの技術を組み合わせたシステムのフィジビリティ・スタディ(実現可能性調査)を12月から実施する。日立は,双方向性を生かしたユーザーからのリアクション管理などのマーケティング・サービスやオークションを含めたテレビ・コマースなどのアプリケーションを想定している。一方,ファンタスティックの日本法人であるファンタスティック・ジャパンは,「日立との提携は,アジア市場向けの戦略」との位置付けを明らかにした。

 ファンタスティックのソフトを使ったサービスは,国内ではNTTコミュニケーションウェア(NTTコムウェア)が提供する意向を明らかにしている。「すでに技術的にはサービスできる段階にある。システムは,JCSATやNSTARといった通信衛星を使い,IPマルチキャストでコンテンツを配信する仕組み。複数のユーザーと商談中で,2001年の初頭にはサービスを始められそうだ」(NTTコムウェア)という。

(藤川 雅朗=日経コミュニケーション)