ポイント |
パワードコムとNTTコミュニケーションズの広域イーサで2重化
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IP化により拠点間の電話転送にかかるコストを削減
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音声・ホスト通信と,メールなどのIP通信は網を分離 |
クレジットカード大手の三井住友カードは2月,社内網の刷新を完了させた。内線に加えカード利用者からの電話も,IP化した後で広域イーサネットに流す。通話トラブルや音質の劣化がないように,網を2重化し帯域制御を取り入れた。
三井住友カードが社内ネットワークを刷新した理由は,VoIP(voice over IP)の導入などによるコスト削減にあった。地方の支店からコンタクトセンターへの自動転送など,加入電話を利用していた部分をIP化。通話コストを大幅に減らした。
従来のネットワークでは,通信料や機器のリース料,保守料などで年間約2億8000万円かかっていたが,刷新後は約1億8000万円。構築時の投資総額は3億円程度になる。
1年をかけて拠点間通話をフルIP化
まず2003年2月に,東京と大阪の両本社と東京コンタクトセンター,日本総研のデータ・センターの大規模4拠点を結ぶATM(非同期転送モード)専用線を広域イーサネットに移行。「東京・大阪間を結ぶATM専用線は非常に高価。この移行によるコスト減が,削減した1億円の大部分を占める」(出口雅一システム企画部シニアスタッフ)。拠点間の内線電話は,VoIP化した後で広域イーサネットに流す。
システム企画部 グループマネージャー 神野 明久 |
採用したサービスは,パワードコムの「Powered Ethernet」とNTTコミュニケーションズの「e-VLAN」。それぞれの網を10Mビット/秒のイーサネット専用線で接続し,網を2重化した。Powered Ethernetとe-VLANを選んだのは「網を完全に2重化するため,アクセス回線まで提供できる事業者が条件だったから」(神野明久システム企画部グループマネージャー,写真)。
さらに2003年7月には,大阪本社内にあったコール・センターを独立させて大阪コンタクトセンターを開設。ここもPowered Ethernetとe-VLANに各10ギガで接続した。
入会受付や会員向けサービスを担当する支店やサービスセンターも2003年9月,フレーム・リレーから広域イーサネットに移行。2重化はせずに,Powered Ethernetかe-VLANのどちらかに接続した。アクセス回線には1Mビット/秒のイーサネット専用線を利用。広帯域を生かして,支店,サービスセンターにもVoIPを導入し,すべての拠点間通話をIP化した。
2004年2月にはパワードコムのIP電話サービス「Powered IP Centrex」を導入。これで拠点間内線・外線ともにIP化が完了した。東京・大阪の両本社からの市外電話はIP電話で発信する。市外に限定したのは,市内電話はマイラインで契約した東西NTTの方が安いからだ。
既存のPBXをIP対応に変更
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大規模拠点は,業務により異なる2系統のPBX網を持つ。法人営業や経理などの一般業務向けにはNECのPBX「APEX」を利用。コンタクトセンターや本社での回収業務など,電話応対業務向けには米アバイアの「DEFINITY」を採用していた。
電話のIP化に当たり,これまで使ってきたPBXをIP網に接続できるようにアップグレード。そのまま使い続けることにした。PBXを全く新しいIP-PBXに刷新するのでは,電話機の入れ替えも生じてコストが高くつくからだ。具体的には,既存のPBXにイーサネットにつなげるためのインタフェース・ボード「IPトランク」を追加して,ファームウエアを書き換えた。
従来は拠点間通話に加入電話を利用していた支店やサービスセンターまでVoIP化したことで,電話代の総額を大きく削減できた。大規模拠点に関しては,ネットワーク刷新以前からATM専用線に音声とデータを多重化。通話料の定額化を既に実現していた。
支店からの転送電話代も削減
三井住友カードはカード利用者や同社のカードを扱う加盟店の電話代負担を減らすため,「アクセス・ポイント」と呼ばれる電話番号を札幌・仙台・名古屋・広島・福岡の各支店に用意。アクセス・ポイントにかかってきた電話は,自動的にコンタクトセンターに転送する仕組みを作った。
IP化するまでは,支店からの転送に東西NTTの電話転送サービス「ボイスワープ」を利用しており,「これが電話代の大部分を占めていた」(神野グループマネージャー)。拠点間通話のVoIP化によって,転送のたびに発生していた電話代を削減できた。かかってきた電話をVoIPに変換して転送するため,日立コミュニケーションテクノロジーのVoIPゲートウエイ「NT-40i」を,アクセス・ポイントのある支店に導入した。
スキルに応じて電話を振り分け
アクセス・ポイントからの通話は,いったん大阪のコンタクトセンターにすべて転送する。その後,電話の込み具合,電話オペレータのスキルに応じて,コンタクトセンターのDEFINITYが大阪と東京の電話オペレータに振り分ける。
音声パケットは広域イーサネット網を通すため,大阪から東京に振り分けてもコストがかかることはない。電話の振り分けには,DEFINITYの独自機能「Best Service Routing」(BSR)という機能を使う。
まず大阪コンタクトセンターに転送するのは,東京よりも電話オペレータの人数が多いから。急増する電話問い合わせに対応するため,2003年7月に開設。BSRの仕組みは2002年10月に導入した。それ以前は,すべて東京コンタクトセンターで電話を受け,東京で受けきれなかった分だけを大阪に転送していた。東京と大阪はATM専用線で結んでいたため,コストは発生しなかったが,東京はフル稼働しているが大阪は空いていることが多いという問題があった。
音声/SNA通信とIP通信を分離
三井住友カードにとって,カード利用者や加盟店に対応するコンタクトセンターや本社の電話と,利用履歴などの情報を管理するホスト・コンピュータとの通信は業務の生命線。切れないだけでなく,音質やレスポンス速度を落とさない工夫を施した。
まず二つの広域イーサネットにつながる大規模拠点は,網ごとに流すデータを分けた。e-VLANには音声とホスト・コンピュータのSNA通信を,Powered EthernetにはメールやグループウエアなどのIP通信を流す(図)。「メールやグループウエア,Webアクセスは急激にトラフィックが増えることがある。電話の音質やSNAのレスポンスを確保するため網を分けた」(出口シニアスタッフ)。
このような分け方をしたのは,e-VLANとPowered Ethernetの料金体系が違うから。導入当時,e-VLANはゾーン制の料金体系を取っていた。例えば10Mビット/秒のアクセス回線を100Mビット/秒にすると,アクセス回線の料金だけでなく,ゾーン間接続料金も高くなる。「いつどのようにトラフィックが増えるか分からないIP通信は,増速しても料金が安いPowered Ethernetに通すことにした」(出口シニアスタッフ)。
図 二つの広域イーサネットで相互バックアップ 本社,コンタクトセンター,データ・センターは広域イーサネット網を2重化している。 |
※本記事は日経コミュニケーション2004年5月10日号からの抜粋です。 そのため本文は冒頭の部分のみ,図や表は一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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