「メロっちゃ!」は,ヤマハが2000年3月から運営しているブラウザフォン向け着信メロディ(着メロ)の販売サイト。約6000曲の着メロを有料でダウンロードできる。システムはサイト開設当初から自社で開発。急増するトラフィックをさばくため,柔軟かつ迅速にWebサーバーを増設できるシステムを作り上げた。

(閑歳 孝子)

河本晃一・コンテンツ事業推進部技術開発グループ主任(左)と梅沢悟・メディア総合戦略推進室技術補(右)

「歌うぜ!カラホーダイ」(左)や「Kクリ」(右)などのサービスもブラウザフォン向けに提供する

 「開始当初は,着メロがビジネスになるかどうかもわからなかった。それが,2年もたたずに会員が300万人を超える巨大サービスになった」――(中村俊介・コンテンツ事業推進部モバイルコンテンツグループマネジャー)。

 「着信メロディ」(着メロ)とは,携帯電話が着信時に奏でる音楽のこと。着メロの販売は,ブラウザフォン向けEC(電子商取引)サービスの中でも,特に多くのユーザーを集めている。

 ヤマハが運営する「メロっちゃ!」は,最新のヒット曲などの着メロを販売する。映画のテーマ・ソング,童謡などの“定番”も幅広く用意。約6600の登録曲数は業界でも一,二を争い,売上高は年間50億円弱にも上る。

 対応端末は,(1)NTTドコモのiモード,(2)KDDIのEZweb,(3)J-フォンのJ-スカイ――に加え,(4)Lモード対応の固定電話機でも利用できる。再生できる和音数など,各端末の仕様の違いに合わせた着メロを用意している。

 iモードの503iシリーズやJ-フォンのJava対応端末ではストリーミング形式の試聴も可能だ。パソコンで試聴したあと,ブラウザフォンで着メロを受け取るサービスもある。

2年でサーバー2台が十数台に膨張

 ブラウザフォン向けサービスに乗り出す前,ヤマハはMIDIを使ったパソコン向け音楽配信サイト「MidRadio」を提供していた。しかし,「いまだにビジネスとは呼べる規模には発展していない」(長谷川豊・メディア総合戦略推進室音楽ポータルプロジェクトリーダー)。

 一方,暗中模索で始めたブラウザフォン向けサービスは,うなぎ登りにユーザーを獲得。「開設した直後はユーザーの伸び率が毎月,前月比200%を超え続けた」(中村マネジャー)。

 当初は,Webサーバーとデータベース(DB)・サーバーをわずか1台ずつでスタート。しかし,ユーザーの急増に合わせて,サーバーを次々と増設していった。現在はケーブル・アンド・ワイヤレスIDCのデータ・センターに十数台のサーバーを置き,300万会員のブラウザフォンからのアクセスをさばいている。

 実際にヤマハが対応するのは,会員240万人分のトラフィック。会員が約70万人いるJ-フォン向けサービスのほとんどは,外部に委託している。

サーバー群をサービスでグループ化

 データ・センターには,ブラウザフォン向けサービス用のサーバーのほか,ヤマハの会社案内用のWebサーバーや,パソコン向け音楽関連サービスのサーバー群も設置してある。

 3サービスの全データ量のうち,「ブラウザフォン向けサービスは全体の25%」(河本晃一・コンテンツ事業推進部技術開発グループ主任)を占める。1ページあたりの容量に制約があるブラウザフォン向けサイトは,パソコン向けサイトよりも,Webページや音楽データのデータ容量を絞り込んでいる。つまり,「アクセス数は圧倒的に多い」(河本主任)わけだ。

※全文は,日経コミュニケーション2002年2月18日号をご覧下さい。

図 ヤマハの音楽関連サイトのシステム構成
ブラウザフォン向けサイトに加え,パソコン向けサイト,会社案内用サイトが同居している。IPアドレスは,サービスごとなどに割り振ってある。Webサーバーに負担をかけない狙いから,曲データや会員情報だけでなく,Webサーバーが利用するHTMLファイルなどをすべてDBサーバー兼NFSサーバーで管理している。

 本記事は日経コミュニケーションからの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。