ADSL(asymmetric digital subscriber line)の純増数に頭打ち感が出てきた。ADSL事業者各社は次なる戦略を打ち出し始めている。ソフトバンクはFTTH(fiber to the home)に携帯電話,イー・アクセスも携帯への新規参入を狙っている。一方で,アッカ・ネットワークスは他社の動きを尻目に,これまで沈黙してきた。そのアッカも5月10日にUSENの子会社であるFTTH事業者ユーズコミュニケーションズ(UCOM)との業務提携でコンシューマ向けFTTHへの参入を発表。ADSLにとどまらない次の展開を打ち出してきた。そこで湯崎英彦代表取締役副社長・副社長執行役員に今後の戦略を聞いた。(聞き手は山根 小雪=日経コミュニケーション

──UCOMと展開するサービスについて聞かせてほしい。

 当社が提携するインターネット接続事業者(プロバイダ)と組み合わせたサービスとなる。UCOMが保有する光ファイバをアッカの中継網に接続。ADSLと同様に,提携プロバイダからコンシューマ向けに販売する。2005年9月から大都市圏を中心としたUCOMのサービス提供エリアからサービスを開始する予定だ。提供エリアを拡大するのは,2006年3月以降の見通し。戸建て住宅向けも視野には入れているが,もう少し先の話になる。

──自社で設備を持ってFTTHに参入しないのはなぜか。

 FTTHを提供するに当たって,NTT東西地域会社やKDDI,ソフトバンクのように直接参入する方法も選択肢にはあった。しかし,東西NTTを追って参入した事業者が必ずしも順風満帆というわけではない。自ら設備を持つ事業者が増えるほど,その設備を利用者で埋められる可能性は低くなる。当社は他事業者との提携の方がメリットがあると判断した。

 また当社には,マンション向けの営業ノウハウがない。マンションにFTTH回線を引き込む入線営業はUCOMとUSENが担当する。UCOMの回線に乗るプロバイダは当社も含めて,世帯ごとに営業をかけることになるだろう。結果として,UCOMの1本のFTTH回線上に複数のプロバイダが乗っかる形になる。

──提携先にUCOMを選んだのは。

 UCOMには,ホールセール事業を本格化させて遊んでいる設備をフル稼働させたい思惑がある。提携プロバイダも,現時点ではUSENとソニーコミュニケーションネットワーク(So-net)にとどまっている。だが,提携プロバイダを増やすためには,プロバイダごとにユーザー認証を担うBAS(broadband access server),サポートやオーダーの仕組みを用意しなければならない。この部分は当社の設備が使える。当社とUCOMは“WIN-WIN”の関係を築けると確信している。

──トリプルプレイへの対応は。

 0AB~J番号のIP電話は,早い段階で当社自ら提供したいと考えている。映像系サービスなどはプロバイダ次第だろう。

──ADSLの時代は終わったのか。

 ADSLはなくならない。例えば工事現場などFTTHが適さない用途はたくさんある。今は「ADSL」とか「FTTH」とか,サービスの実現技術に注目が集まりすぎている。本来,利用者は実現技術など何でもいいはずだ。

 大切なことは,必要なサービスを適正な価格で提供すること。今後はサービスの選択肢がますます増え,利用者が用途によって使い分ける時代になる。当社も最初からADSLだけと決め打ちしていたわけではない。光アクセスの提供も,会社設立当初から考えていたことだ。機が熟すのを待っていた。

──ソフトバンクもイー・アクセスも携帯電話事業への参入に熱心だ。

 モバイルを自ら提供することは,当社のスコープには入っていない。データ通信を考えると,無線はベストな方法ではないからだ。音声を含めた形での提供となれば話は別だが,自らやる気はない。他社サービスをMVNO(mobile virtual network operator)で利用するというのはあり得る話だ。