セキュリティ・ベンダーの米マカフィーは,新たな脅威となっているスパイウエア対策ソフトウエアの開発・販売に本腰を入れた。全世界の販売戦略を統括する上級副社長であるロビン・マトロック氏に同社研究所での分析と今後の課題について聞いた。(聞き手は市嶋 洋平=日経コミュニケーション)

――スパイウエアの被害状況について教えてほしい。
 脅威が急速に増していると感じている。
 当社のセキュリティ研究機関であるMcAfee AVERT(Anti-Virus and Vulnerability Emergency Response Team)の解析では,昨年12月の時点でユーザーからの緊急報告のうち,実に34%がスパイウエアに関連したものだった。そのうちの半分がアドウエアだ。アドウエアは気付かないうちにインストールされてしまい,ユーザーの行動履歴をもとに表示する広告を動的に変えたりする。中にはパソコンで収集したユーザー情報を,サーバー側に送信しているものもある。

――ユーザー側の意識はどうか。
 スパイウエアの脅威は,おそらく多くのユーザーが気付いていないのだろう。我々の調査ではインターネットに接続しているユーザーの75~80%がなんらかのスパイウエアに感染していると見ている。
 ただし意識は急速に変わりつつある。オンラインでユーザーのパソコンのスパイウエアを検査する機能を提供したところ,当社への問い合わせ電話が鳴り止まなくなったことがある。

――ウイルスとスパイウエアの違いは。
 ウイルスの場合であれば,見つけたユーザーは100%必ず削除する。しかしスパイウエアの場合は,見つけたとしても人によっては削除の必要がないと考える場合がある。当社の対策ソフトウエアでは,スパイウエアの「削除」だけでなく「隔離」という設定ができるようにしている。また,現時点のスパイウエアは他のパソコンに感染したりするものではない。
 ただ認識してほしいのは,とにかく凄まじい量のスパイウエアがインターネット上にあふれていること。ユーザーにとっての影響は,ユーザーの大事な情報を盗むものから,パソコンの速度が遅くなるものまで様々。ウイルスと同様,対処のために新たな防御方法が必要となっている。

――スパイウエアの中にはキーの動作からパスワード情報を盗むものがあるが,IP電話の音声パケットを盗むようものはあるのか。
 IP電話のシステムもPCのアーキテクチャーがベースとなっており,それがインターネットにつながっているわけだ。潜在的には問題となる可能性を秘めている。IP電話システムが搭載するオペレーティング・システムやアプリケーションなど,それぞれのぜい弱性が攻撃の対象となり得るからだ。