日本テレコムの「おとくライン」やKDDIの「メタルプラス」,平成電電の「CHOKKA」――。いま花盛りの直収電話サービスを支えている制度が「ドライ・カッパー」。この制度ができてから,通信事業者はNTT東西地域会社のメタル回線を電話のサービス抜きで借りられるようになった。東西NTT以外の事業者がADSLサービスで活用し始めた。そして2003年度には貸出料金(接続料)が大幅に引き下られ,住宅向け加入電話の基本料金を下回った。これが直収電話の登場を促した。実はこの値下げの立役者はADSL事業者のイー・アクセス。同社企画部の保田由佳課長補佐に経緯を聞いた。(聞き手は市嶋 洋平=日経コミュニケーション


――ドライ・カッパー料金の引き下げを指摘した経緯を教えてほしい。

 2001年11月のことだった。東西NTTが加入時に施設設置負担金として7万5600円を支払う必要がない「加入電話・ライトプラン」を総務省に認可申請した注1)

 このサービスを見てドライ・カッパー料金の引き下げにつながる問題に気づいた。

注1:加入電話・ライトプランは基本料金に上乗せで毎月672円を支払うサービスだった。しかし,2005年3月に東西NTTが施設設置負担金を半額の3万7800円に値下げするのと同時に,ライトプランの上乗せ分が毎月375円に値下げされた。

――その問題とは。

 当時,ユーザーはドライ・カッパーのメタル線をADSL用の回線として使っていた。そしてこのユーザーのほとんどは,ドライ・カッパーへと切り替える前は同じメタル線を加入電話やISDNのサービスで利用していた。

 つまり,ユーザーは加入電話やISDNで施設設置負担金を支払って,さらにドライ・カッパーへの切り替えで施設設置負担金をもう一度支払う格好になっていた。当時のドライ・カッパーにはライトプランのように,施設設置負担金の相当額が上乗せされていたからだ。

 ライトプランの登場で,この2重払いの構造に気づいた。そして,この点を2001年12月,意見書として総務省に提出した。

 2002年にはもう一つの矛盾点も発見した。ドライ・カッパーは電話局からユーザー宅まですべてがメタル線。ところが,途中まで光ファイバで伝送するケースがある電話のメタル線と同様に,光ファイバの敷設にまつわる費用の償却費がドライ・カッパーにも含まれていた。これも指摘し改善された。

――2003年1月,東西NTTからドライ・カッパー料金の新提案があった。施設設置負担金を支払ったユーザーと,そうでないユーザーを分けて料金を設定した。

 ユーザーを分けるために20億円もの費用をかけてシステムを開発する必要があるという。とんでもないと思った。結局,ユーザーを分けずコストを薄く広く負担するという総務省の結論に落ち着いたが,東西NTTの進め方には疑問を抱いた。

――イー・アクセスの主張が実った形で,ドライ・カッパーの貸出料金は1400円程度まで引き下げられた。ただこれは直収電話を提供する他社にメリットが大きかったと思われる。

 矛盾があったり時代にそぐわなくなっている制度については,通信事業者として意見をきちんと言っていきたい。これが大前提である。特にADSL事業者である当社にとっては,メタル線など加入者回線にまつわる制度は極めて重要と考えている。