無線LANを使って内線通話が可能な携帯型IP電話機が,企業ユーザーの注目を集めている。ただし利用はオフィス内中心で,外出先でも電話がかけられるのは,NTTドコモが発売しているFOMAと無線LANの一体型端末「N900iL」しかないのが現状。そこへ,富士通系のベンチャー企業であるネットツーコムが対抗製品を投入する。王社長に,FOMAに対する勝算を聞いた。(聞き手は高槻 芳=日経コミュニケーション)

――無線LANと公衆サービスの両方に対応している製品は今のところ,NTTドコモの「N900iL」の独壇場だ。

 当社が3月に発売する「WiPCom」も,端末内蔵の無線LAN機能とは別に公衆の無線通信サービスに対応できる。本体にコンパクト・フラッシュ(CF)スロットを実装しており,例えばPHSカードを差し込めば,PHS事業者の提供する音声通話や定額パケット通信サービスを利用できるようになる。当初の対応機器はウィルコム(旧DDIポケット)のPHSカードだが,NTTドコモのPHSカードも使えるようにする。

――そのほかに,N900iLに対する優位性はあるのか。

 高精細な液晶画面を備えており,端末内蔵の無線LAN機能を使ってWebブラウザ,メールができること。フュージョン・コミュニケーションズのIP電話サービス「FUSION IP-Phone」を利用すれば,050番号を使って外線通話も可能だ。

――N900iLもWebブラウザを搭載しており,イントラネット端末として使える。
 
 N900iLの機能はブラウザや,通話相手の状態を端末の画面で確認できるプレゼンス機能など限定的。しかもプレゼンスを管理するサーバーなどは,ドコモ仕様に対応した製品を入手する必要がある。こうした制約に,窮屈さを感じる企業ユーザーは多いのではないか。

 WiPComは,端末に搭載可能なアプリケーションの選択肢が非常に多い。というのも基本ソフト(OS)に米マイクロソフトがPDA(携帯情報端末)向けの「Windows CE .NET 4.2」を採用しているからだ。例えば.NETを利用して業務用アプリケーションを運用しているユーザーは,WiPComを業務端末としてすぐに導入できる。こうした業務端末としての拡張性や自由度を武器にN900iLを追撃したい。