英ブルドッグ・コミュニケーションズは,英ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)が2004年5月に1860万ポンド(約37億2000万円)で買収したブロードバンド事業者。同社は加入者線のアンバンドル(加入者線開放)を利用したADSL(asymmetric digital subscriber line)サービスを展開中である。C&Wは,アンバンドルを利用したブルドッグのブロードバンド・サービスで,英BTが一人勝ちするブロードバンド市場に殴り込みをかける。ブルドッグのマーケティング・コミュニケーション部長のグレゴリー・ソープ氏に,英国のブロードバンド事情を聞いた。

(聞き手は山根 小雪=日経コミュニケーション

──英国のブロードバンドが世界的に見て遅れているというのは本当か。

 本当だ。英国のブロードバンドは下り最大速度512kビット/秒が中心。256kビット/秒のサービスをブロードバンドと呼んでいる事業者すらある。だが,英国のブロードバンド市場は,いままさに花開こうとしているところだ。現在の英国のブロードバンド・ユーザーは約400万。英国通信業界の規制当局であるOfcom(Office of Communication)によれば,週当たり5万5000ずつ加入者が増えている。

──英国のブロードバンド・サービスの特色は。

 ユーザーから見ると多くのブロードバンド事業者がいる。大きくはADSLとCATV,アンバンドルを利用したサービスの三つに大別できる。だがADSLサービスの99%が英BTのサービスの再販だ。料金に違いはあるものの,サービス内容には違いがない。ブロードバンドに関する新しいテクノロジは続々と登場しているのに,英国では価格競争だけをしている状況だ。

──英国でアンバンドルを使ったサービスのシェアが低く,BTが99%のシェアを持つのはなぜか。

 Ofcomはブロードバンドを強く推進している。2000年にアンバンドルを開始してから多くの事業者が参入した。だが不可侵領域であったBTの交換局に設備を入れることは,想像以上に大変なことだった。さまざまなトラブルが発生し,事業計画に遅れが生じた。結果としては,資金繰りに苦しむ事業者が相次いだ。設備は何とか用意できても,マーケティングにかける資金不足からブランドが定着せず,成功しなかった。
 また新規参入事業者のサービス品質よりも,BTのサービス品質の方が高いケースもあった。低料金に惹かれて新サービスに飛びついても,しばらくしてBTに戻るユーザーも少なくなかった。

──ブルドッグのADSLサービスはBTとどう違うのか。

 当社のアンバンドルを利用したADSLサービスの魅力の一つは高速性だ。BTが512kビット/秒のサービスしか提供していないのに対して,当社は英国内では高速の1Mビット/秒,2Mビット/秒,4Mビット/秒のサービスを取りそろえている。またBTのサービスを再販する場合は請求書が2枚になるが,当社であれば1枚で済むというメリットもある。
 加入者数は未公開だが,現在38の交換局に設備を敷設し,サービスを展開中だ。C&Wに買収されて以降,急激にサービス提供エリアを拡大している。2005年半ばまでには約400の交換局にまで広げる。これは人口カバー率で30%に当たる。

──日本ではソフトバンクがアンバンドルを利用した低価格なADSLサービスを打ち出してブロードバンドが一気に広がった。

 ソフトバンクが非常に大胆なやり方でサービスを展開したことは知っている。だが,当社はソフトバンクのようなローマージン,ローコストの戦略は取らない。ユーザーが魅力を感じる付加価値を付けて,ハイマージンのサービスを提供したい。