フィンランドのノキアは,世界の携帯電話市場では押しも押されぬトップ企業。だが日本ではこの数年間,日本向け携帯電話端末の供給を事実上“休止”していた。第3世代携帯電話(3G)サービスが日本に続いて欧州でも立ち上がり始めたことを背景に,3Gの世界標準規格「W-CDMA」に対応した端末で日本市場への再挑戦を果たした。ノキアで携帯電話の開発に携わるアンティ・バサラ副社長に,端末開発戦略や日本市場への取り組みを聞いた。(聞き手は高槻 芳=日経コミュニケーション

――ノキアは欧州や日本で一斉に3Gの新端末攻勢をかけている。ただし各国の3G商用化状況や市場ニーズはまちまち。各市場にどう対処していくのか。

 音声通話専用端末は別だが,様々なデータ通信機能を備えた「スマートフォン」の分野では,「シリーズ60」という世界共通のプラットフォームを主軸に据えて開発を効率化している。同シリーズは,Webブラウザやパソコンとのデータ連携機能,効率的な文字入力ソフトなどを備える。

 シリーズ60を世界へ展開する上で最大のポイントは,このシリーズでは端末インタフェースや内蔵アプリケーションなどを,携帯電話事業者が望むように柔軟にカスタマイズできる点だ。日本でも事業者と密接に連携して,彼らの要求には柔軟に対応していく。すでに日本のボーダフォンはシリーズ60端末を採用,ボーダフォン・ブランドの「702NK」として近く発売する予定だ。現在はNTTドコモとも端末開発の話を進めている。

――日本では,NTTドコモが最新のFOMA「901iシリーズ」の一部機種でLinux OSを採用した。一方,シリーズ60のベースとなっているのはシンビアンOSだ。他のOSと比べて,シンビアンOSのメリットは何か。

 シンビアンOSははじめから携帯電話のために開発された。Linuxのようにパソコン向けに開発されたOSとは異なる。端末に内蔵するアプリケーションの開発効率や安定性,消費電力といった点で,シンビアンOSに一日の長がある。

――端末の高機能化にともなって,パソコンと同じようにウイルス・プログラムが発生する危険は高まる。つい先日も,シリーズ60の端末機能をロックする可能性があるアプリケーションが発見された。

 私自身,携帯電話のセキュリティは大変重要な問題だと認識している。すでに「Nokia 6670」という端末には,フィンランドのエフ・セキュアのアンチウイルス・エンジンを組み込んである。今後は他の製品にも同様のエンジンを搭載していく方針だ。