米ブロードコムは,無線LANやIP電話,通信機器などのチップを開発・販売する半導体メーカー。新しく発表した,携帯型IP電話用のチップセットや米国におけるIP電話の浸透状況について聞いた。(聞き手は宗像 誠之=日経コミュニケーション

--10月に発表した携帯型IP電話用のチップセットについて教えてほしい。
 VoIP(voice over IP)用のプロセッサである「BMC1160」と,無線LAN用のプロセッサ「BCM4318」の二つで構成する。BCM4318は,IEEE 802.11gに対応。無線LAN上で音声をやり取りするために重要な,QoS(quality of service)やセキュリティを実現するソフトウエアもサポートしている。

--どのメーカーがいつ,ブロードコムの新チップセットを搭載した携帯型IP電話を開発する予定か。

 日本のメーカー数社とも話をしているが,詳細な会社名はまだ明かせる段階でない。発売時期もまだ分からない。チップを乗せるボードやソフトウエアの開発など,メーカー側でこれからやるべき作業はたくさんあるからだ。

--米シスコ・システムズなどは既に携帯型IP電話機を出荷している。これらには競合している半導体メーカーのチップが搭載されていると思うが,他社に先行されたデメリットはあるか。

 新チップセットは集積度が高いことと,音声通信に適したソフトウエアも高性能なことで他社より優位にある。先を越されてあせる必要はない。これまでも,後発で参入しても競合他社を圧倒した経験がある。例えば,以前開発した固定型IP電話用のチップ。これも後発だったが,性能が評価されて非常に多くのメーカーに採用された。携帯型IP電話用チップでも自信がある。

--米国での,企業におけるIP電話の利用動向は。

 一般消費者向けに比べると,企業ではIP電話がかなり浸透し始めている。IP電話は,既存の固定電話に比べると配線が簡単なことなどが企業で受けている理由だ。現在では固定型のIP電話が多いが,今後はモバイル化の需要が高くなるはずだ。無線LANを導入する企業が増え,併せて,携帯型のIP電話の導入も増えてくるだろう。