システム構築を手掛ける日本事務器は7月からIPセントレックス・サービスを開始する。同社の事業はERP(enterprise resource planning)をはじめとしたアプリケーション・ソフトの導入サービスが主体。PBXの販売経験も薄い同社が,なぜいまIPセントレックス・サービスの提供に踏み切ったのか,田中啓一常務取締役にサービスの狙いや営業戦略について聞いた。(聞き手は白井 良=日経コミュニケーション)

――畑違いのIPセントレックス・サービスを提供する狙いは何か。

 これまでもLANなどのデータ系ネットワークは手掛けていたが,PBXなどの音声系ネットワークは基本的には扱っていなかった。しかしVoIP(voice over IP)技術の普及で状況は一変した。データと音声を融合すれば仕事のやり方すら変わる。今後は当社の提供するシステムの中に,今までのデータ,画像に加え,音声も入る形で提案していく必要があると判断した。
 また当社の市場を守るという側面もある。これまでネットワークを中心に展開していた事業者が,アプリケーション分野にも進出してきた。コンピュータだけのサービス提案にとどまっていると,提案の主導権がネットワーク事業者に握られ,市場がだんだん浸食されてしまうという危機感があった。

――サービス内容を教えてほしい。

 LANにつながるIP電話機をレンタル提供し,当社のデータ・センターに設置したNECのIP-PBX「SV7000」で内線電話を交換する形態だ。データ・センターとユーザー拠点をつなぐ回線は,ユーザーの希望に応じて選択できるようにする。「1内線当たり月いくら」という料金体系にする予定だ。
 さらにパソコン上で名前をクリックすると自動的に電話のかかる「電子電話帳」,パソコンの画面でお互いの顔を見ながら数名で会議できる「テレビ会議」,メールや音声,ファクシミリを統合して扱う「ユニファイド・メッセージ」といった企業内のコミュニケーションに必要なサービスも併せて提供する。今までのPBXでは出来なかった機能を売りに,営業を展開していきたい。
 当社はもともとERPやCRM(customer relationship management)といった業務アプリケーションの導入サービスが事業のメインだ。IPセントレックス・サービスだけを売ることもあるが,ERPやCRMのシステムの一部にIPセントレックスを組み込んだ形での提案も考えている。

――ERPやCRMとの連携とは具体的にはどういったものか。

 CRMについて言うと,社員が使うCTI(computer telephony integration)などがその一例だ。社員に電話がかかってくると顧客情報を自動的に表示したり,企業ポータルやグループウエアから取引先の名前をクリックするだけで電話をかけられたりする。わざわざ電話番号を調べてダイヤルする必要がなくなる。
 ERPとIPセントレックスの連携については,開発部門と議論しているところだ。ホテル,病院,公共などユーザーごとにニーズは異なる。できるだけ早く結論を出して,2004年上期中には営業を開始する。

――サービスという形態で提供するのはなぜか。

 IPセントレックスを使いこなすには,IP電話サーバー以外のサーバーを運営する必要が出てくる。例えばテレビ会議サーバーや,ユニファイド・メッセージ用サーバーなどがそうだ。音声も含めて情報共有するなら,ドキュメント・サーバーの設置も考えるべきだ。
 そのためユーザー企業は運用管理に多くのエンジニアが必要となる。専任担当者が5~6人もいるなら良いが,そこまで体力のある企業は少ない。かといって1人に任せると,IP電話を利用するメリットを最大限に引き出せない。例えば総務部門から電話に詳しい人を担当者に選んでも,ユニファイド・メッセージなどIP電話特有の機能は使いこなせないだろう。
 機器を販売するだけでは,ユーザー側は人件費の負担が大きくなってしまう。そのため月額いくらのサービスとしての提供にした。