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日経コミュニケーション

このままではインターネットは崩壊しかねない

鈴木幸一
インターネットイニシアティブ
代表取締役社長

2004/04/07

日本の商用インターネットの最初期からインターネット接続サービスを提供しているインターネットイニシアティブ(IIJ)。鈴木幸一社長はブロードバンド・ユーザーが画像や動画などの大容量データをピア・ツー・ピアでやり取りし始めた現状を見て,「このままではインターネットは崩壊しかねない」と警鐘を鳴らす。鈴木社長に,今のインターネットが抱える課題と解決策などを聞いた。(聞き手は杉山 泰一=日経情報ストラテジー)

−−「インターネットが抱える大きな課題」とは何か。

 産業として,将来的に展望を持てる形になっていないことだ。
 通信サービスは,まずネットワークと通信機器があって,そのうえでサービス内容や利用料金が決まるもの。ところがインターネットは,「安くて速いサービスありき」で発展している。
 特に最近はADSLなどのブロードバンドの普及によって,インターネット接続サービスは定額料金が当たり前になり,将来の設備投資を考えていないかのような料金水準で提供されている。
 しかも,ルーターやLANスイッチなどの通信機器は米国など外国製のものを採用するプロバイダやIX(internet exchange)が多い。国内メーカーが育ちにくい状況だといえる。
 通信機器の高速化もトラフィックの増加に追い付いていない。例えば、IXを通るトラフィックは200ギガ、400ギガと増えている。しかし、現実には10ギガ対応のLANスイッチしかなく、複数台をずらっと並べて対応している。これでは,運用者の負担が増す一方だ。
 このままだと日本のインターネットはどうなってしまうのか。インターネットは様々な形でつながっているので簡単には落ちないだろうが,危機感は増すばかりだ。
 そこで,いろいろな通信機器メーカーや通信事業者に声をかけて,7〜8カ月くらい勉強会を重ねた。ここで得られたデータなどを総務省に提出して,専門の調査研究会「次世代IPインフラ研究会」を2月に立ち上げてもらったというわけだ。

−−次世代IPインフラ研究会の具体的な目標は?

 今後想定されるIP化やブロードバンド化のさらなる進展を考慮した上で、将来的なトラフィックの急増に対応できる次世代のIPインフラ整備の在り方について展望することだ。
 また、次世代IPインフラ整備に対する政策支援の在り方についても検討する。
 同研究会は2004年12月末まで活動する予定。まずは6月に第一次報告書をとりまとめる。
 現在の日本のインターネット産業は混とんとした状況にある。しかし、40メガ超のADSLなど世界一速いブロードバンド回線を安く使えるのも確かだ。だから、現状をうまく整理できれば、日本から世界に発信できる産業に育つという期待感がある。
 インターネット産業で世界をリードする米国は、「国防」という概念があるおかげで、インターネット技術の開発に潤沢な資金を投入できている。宇宙産業や軍需産業に欠かせないからだ。日本には,e-Japan戦略があると言っても,予算の規模が全然違う。
 かつての日本には、NTTを中核に据えた“通信産業”があった。研究開発力を持つNTTを中心に、通信機器メーカーも電線メーカーも工事会社もうまくまわっていた。しかし、そういう意味での“通信産業”はもう存在しない。
 メーカーには、NTTが新しいネットワーク・アーキテクチャを提示しないと動き出さないという甘えがあった。メーカーが甘えを捨てて自発的に動き、NTTなど通信事業者と有機的に連携していければ、通信産業はもっとおもしろくなる。

−−いまのプロバイダのビジネス・モデルに無理があるとしたら、従量課金にすればいいということか。

 そこは悩ましい部分だ。IPパケットを一つずつ数えて課金する仕組みを入れるとなると、その分だけコストがかかってしまう。つまり皮肉なことに、細かな課金をしない方がインターネット接続サービスは安く提供できるのだ。
 しかし、太い回線を引き込んでいる人でも、平均10kビット/秒しかデータを流していない人と、10Mビット/秒の人が同じ料金なのはおかしい。ここは利用料金を変えていかないと、バックボーンがきつい。
 だから、極端な言い方をすれば良識のない使い方をする人に対しては、“ブレーカー”が落ちる仕組みがいる。電気はコンセントを差し込むだけで自由に使えるが、使いすぎるとブレーカーが落ちるでしょう。ああいった概念が必要だ。
 インターネットは産業としてきちんと成り立つ範囲内で適正な価格を維持したまま、どんどん高速化していくことが大切だと思う。(プロバイダの収入が変わらないのに)扱うデータ量が毎年倍々で増えていくことのたいへんさを、理解して欲しい。

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