無線LAN機能を備えた携帯型IP電話端末が相次いで登場している。多数の無線LANアクセス・ポイント(AP)を統合管理できる製品「無線LANスイッチ」と組み合わせて,ワイヤレスの内線電話システムを構築できる。無線LANスイッチの開発ベンダーである米エアスペースのボブ・オハラ氏は,こうしたシステムの実用性を高めるべく標準化活動を推進中。同氏に最新の動向を聞いた。(聞き手は高槻 芳=日経コミュニケーション)

――標準化活動の内容を教えてほしい。

 無線LANのAPとLANスイッチの間の有線区間で,端末の制御情報を高速にやり取りするためのアーキテクチャの策定に関わっている。携帯型IP電話機で,APを切り替えながら通話しても音声が途切れないよう,高速ハンドオーバー機能などを実現できる。
 具体的には,3月からインターネット技術の標準化団体「IETF」(internet engineering task force)のワーキング・グループで無線LANの有線区間に関するアーキテクチャの議論を始めた。2004年内をめどに方向性を固める。これに先駆けて,自社製品に実装しているプロトコル「LWAPP」(lightweight wireless access point protocol)をIETFに提案した。

――無線LANの標準化は,これまでIEEE802委員会の802.11グループが手がけてきた。LWAPPをIETFに提案したのはなぜか。

 私自身も802.11グループでの標準化活動に深く関わっているが,端末とAPの間の無線区間における仕様策定が中心になっている。無線区間におけるQoS機能やセキュリティ機能の標準化など,当面優先すべき課題が山積している。
 このため,まずIETFでの議論を先に始めた。もちろん,802.11グループとも情報を共有していく。

――第3世代携帯電話サービス「FOMA」と無線LANの一体型端末を準備中のNTTドコモも,LWAPPの提案者に名を連ねている。端末の開発元であるNECは,エアスペースの製品を販売する。3社の関係は?

 詳しいことは言えない。だが,NTTドコモの米国子会社はLWAPP開発当初から参画しており,現在も密接に標準化活動に関わっている。NECともワイヤレス内線電話システムの開発で協力体制にあることは確かだ。