Wireless World Reserch Forum(WWRF)は,次世代無線のビジョンや技術について議論する業界団体。各社の共通認識を作り上げておくことで,方式などの統一化を図りスムーズに標準化を進める目的で2001年に設立された。2004年から議長を務めるウーシタロ氏に,WWRFの活動の現状と無線技術の展望を聞いた。(聞き手は閑歳 孝子=日経コミュニケーション)

――WWRFの目的と活動について教えて欲しい。

 WWRFは,2001年に設立した業界団体。無線のビジョンや技術の今後について,世界全体で共通認識を持つことが大きな目的だ。

 ビジョンや技術の共通認識を持つ重要性は,第3世代携帯電話(3G)の例を見ても明らかだ。3Gでは,CDMA2000やW-CDMAなど異なる方式が混在したままサービスが始まった。さらに中国は,これらとは異なる方式を採用している。

 これでは開発の面から見ても効率が悪いし,ユーザーにとっても利便性が失われる。次世代の無線では,こうした事態は避けておきたい。このためには,早い段階から次世代無線について技術やビジョンのすりあわせをしておく必要がある。

――WWRFにはどのようなワーキング・グループ(WG)があるのか。

 現在,六つのWGがある。例えば,次世代の無線技術には何があるのか,どういう仕様にすべきなのかを検討するワーキング・グループもある。これには,MIMO(multiple input, multiple output)やUWB(ultra wideband)などの技術が含まれている。このほか,ビジネス・モデルはどうあるべきかなども議論の範ちゅうだ。こうしたWGが議論をまとめ,白書を出す。これらを年に1度まとめて,「Book of Visions」というタイトルで出版している。

 特徴的なのは,企業だけでなく大学からも参加者が多いこと。市場だけでなく,学術の面からも検討を進める。現在,全世界から140超の企業や大学がWWRFに加盟している。日本では,NECやソニー,NTTドコモなどが企業だ。

――ITU(国際電気通信連合)やIEEE(米国電気電子技術者協会)などの標準化団体との関係は。

 ITUやIEEEは,技術が標準化される場だ。WWRFはこうした標準化が決まるもっと前の段階で,企業や大学で意識の共有を図るための場。こうしておけば,ITUやIEEEでの話し合いがもっとスムーズになるはずだ。

――日本では,NTTドコモが第4世代携帯電話のフィールド実験を始めている。

 次世代無線の研究は,多くの企業や大学で進んでいる。しかし,フィールド実験にまで進んでいるのは私の知っている範囲ではNTTドコモくらいだ。NTTドコモは,WWRFでも非常に積極的で,重要なプレーヤーであることは間違いない。

 フィールド実験では,NTTドコモは変調方式にVSF-OFCDM(variable spreading factor-orthogonal frequency and code division multiplexing)という方式を使っている。これはNTTドコモの独自のもの。これをベースに,どれだけ世界規模のアプローチができるかがポイントだろう。