オンライン・ストア「Amazon.co.jp」を運営するアマゾン・ジャパンは,2003年7月から「Amazon Webサービス」を提供している。これは,Amazon.co.jpが持つ膨大な商品情報や検索機能などを,第三者が運営するWebサイトに組み込めるようにするものである。すでにゲーム情報サイト「ファミ通.com」などが利用している。米アマゾン・ドット・コムでテクニカル・エヴァンジェリストを務めるジェフ・バー氏に,Amazon Webサービスの狙いや米国での成功事例について話を聞いた。(聞き手は武部 健一=日経コミュニケーション)

--アマゾン・ドット・コム(以下,アマゾン)がWebサービスを検討したきっかけは。
 検索エンジンやポータル・サイトの運営者など,いくつかのパートナー企業から,「アマゾンの商品カタログのデータが欲しい」と言われることが多かった。Amazon Webサービスを始める以前は,電子メールやFTPを使ってデータを送信し,個別に対応していた。しかし,このやり方では手間がかかる。
 そこで2002年の初めころにWebサービスの利用を検討し始めた。2002年の7月にはAmazon Webサービスの最初のバージョンを米国の「Amazon.com」で開始した。Webサービスにより,パートナー企業の規模を問わずにデータを提供できるようになった。

--Webサービスの実現のためにどのようなミドルウエアを使っているのか。
 ミドルウエアの種類はセキュリティの問題上,開示することはできない。ただ,オープン・ソースのソフトを使っている。LinuxやPerl,Apacheなどだ。

--米国での利用状況を教えて欲しい。Amazon Webサービスを使っているWebサイトにはどのような例があるのか。
 一人の開発者が運営しているWebサイトから大組織のWebサイトまで幅広く使われている。すでに,全世界で3万5000人が開発者として登録済みだ。
 大きな組織の利用例だと「NBA.com」だ。これはプロ・バスケットボールのポータル・サイトでバスケットボール関連のグッズを購入できる。このサイトに表示されている商品の価格や説明,画像などはすべてAmazon.comのサイトからWebサービスを使って取り込んでいるものだ。
 小さな組織の例だと「simplest-shop.com」がある。このサイトは一人の開発者が作っている。Amazon Webサービスの機能を組み合わせて,商品を比較するという独自の機能を盛り込んでいる。

--アマゾンにとって,Amazon Webサービスを提供するビジネス上のメリットは何か。
 販売チャネルが増えることだ。アマゾンの存在を見つけてくれる人が増えるというメリットもある。また,アマゾンが膨大な投資によって開発したソフトウエアを,Webサービスを通じて開発者の方へ使ってもらいたいとも考えている。

--Amazon Webサービスで使える機能を教えて欲しい。アマゾンが持つ「レコメンデーション(商品の推薦)」のようなユニークな機能も使えるのか。
 今の段階ではレコメンデーションは使えない。ただ,類似商品の表示機能は使える。Amazon Webサービスを導入したWebサイトでは,商品の表示機能だけではなく,ショッピング・カートの作成と維持機能まで組み込める。商品選択後の決済や個人情報の扱いはAmazon.comのサイトで行なう。
 また,Webサイトだけではなく,マイクロソフトの「Word 2003」などのソフトでもAmazon Webサービスが使える。例えば,Word 2003の文書内である単語を選択したとき,その単語に関連するAmazon.com内の商品を表示する,といったことも可能だ。

--日本での取り組みを教えて欲しい。
 まず,Webサービス自体の認識を高める必要があるだろう。それからAmazon Webサービスへの認識を高めてもらうための啓もう活動が必要だと考えている。