オープンソース・ソフト(OSS)導入を検討する際には、自ら人材を育成するとともに、ベンダーが力を入れている分野を把握することが重要だ。では、ITベンダーはOSSを使ったシステム構築の体制をどれだけ充実させているのか。大手7社について、組織、人材、ソフトのカバー範囲、実績などの実態を調べると、大きく二つのグループに分かれることがわかった。日本IBMや富士通はLinuxによる基幹系システムに経営資源を集中、NECや日本ヒューレット・パッカードはミドルウエアにもサービスを広げて幅広いユーザーを取り込もうとしている。

(森側 真一、安藤 正芳)


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図●オープンソース専門組織の人数
図1●基幹業務システムのプラットフォームをLinuxサーバーに移行する住友電工
 全システムのサーバー計590台のうち324台がLinux――。住友電気工業が兵庫県伊丹市に設置するデータセンターでは今年、オープンソース・ソフト(OSS)のLinuxを搭載したサーバーの台数が半分を超えた(図1[拡大表示])。

 同社は2000年に資材管理システムを、メインフレームからLinuxを搭載した日本IBMのIAサーバーxSeriesに置き換えて以降、新規・再構築ともに、すべての業務システムをLinuxサーバーで構築してきた。メインフレームに限らず、UNIXサーバーやWindowsサーバーもLinuxサーバーに置き換える。残っている4台のメインフレームは、2010年までにLinuxサーバーで代替する。

 製造業に限らず、金融関連や通信業などのミッション・クリティカル領域でLinuxを採用する動きが広まっている。例えば、NTTドコモは来年1月上旬、Linuxサーバーを使い、料金系システムの中核部分を再構築する。サン・マイクロシステムズの中型UNIXサーバーで構成しているシステムを、Linux搭載のIA32サーバー約30台に切り替える。システムの開発・保守は、NTTコムウエアやNECなどが担当する。1000台以上の交換機から、料金計算の基になるデータを集める重要な処理を担う。

 東京証券取引所は3系統ある売買システムのうち二つを統合、Linuxサーバーで再構築する。2007年後半の稼働開始を目標に開発を進めている。新システムを受注したのは富士通。現在使っている日立製作所製メインフレームを、富士通のIA64サーバー「PRIMEQUEST」に置き換える。売買システムは「ダウンタイムはゼロを要件とする。万一障害が発生した場合でも迅速に対応できる保守体制をベンダーに求める」(東京証券取引所の売買システム部、松井孝文リーダー)。

メインフレームの代わりにLinux

 ユーザー各社が、基幹系システムにLinuxサーバーを採用する際にITベンダーに求めるのは、メインフレームと同等のサポート力。ITベンダーはLinuxのソース・コードまで修整できる技術力が欠かせない。東証の松井リーダーは「富士通にLinuxの技術者のレベルや保守体制などについて詳しく聞いて“大丈夫”と判断した」という。NTTドコモの情報システム部料金システム担当 古川秀信担当部長も、「開発の現場に出向いて、核となる技術者のスキル・レベル、実際に担当する人数とサポートに割ける時間を確認した」と述べる。

 ITベンダーはユーザーの期待に応える体制を整えているのか。OSSのソース・コードに精通した技術者の人数や開発・保守対象とするソフトの範囲、システム構築の実績などを軸に、各社のOSSに対する取り組みの充実度を探った。


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