富士通は4月6日、世界のハイエンド・サーバー・メーカーで初めて、Linuxを前面に打ち出した基幹業務向け大型IAサーバー「PRIMEQUEST」を発表した。また「サーバーのデパート」と揶揄されてきた日立製作所も、自社開発のユニークなBladeSymphonyを4月から本格出荷した。これまで米国メーカーの後追いだったサーバー開発で、新機軸を盛り込み市場を創造できるのか。カギは市場開拓を意識したマーケティングにありそうだ。

(北川 賢一)


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写真●チタングレーに塗られた富士通の基幹IAサーバーPRIMEQUEST本体と90ナノメートル。技術採用で500万ゲート(2000ピン)の制御チップ、およびシステム・ボード
 「注目してもいいハイエンド・サーバーが2機種、国産メーカーから登場してきた。これでサーバー市場は非常に面白くなる。外資系メーカーを含めて選択の幅が広がるのは歓迎すべきことだ」。新日鉄ソリューションズ(NS-SOL)基盤ソリューション事業部の甲斐龍一郎マーケティング部長は、期待を込めてこう語る。

 顧客に最適のシステムを構築して提供するのがシステム・インテグレータ。ハードやソフトの将来を見すえたサーバーの評価・選択は、基盤ソリューション事業部の重要な仕事だ。富士通や日本IBMなどの大手メーカーに代わり、顧客から直接システムを受注するビジネス機会が増えているだけに、メーカーの“きれい事”の裏を見抜く眼力が求められる。

 目利き役である甲斐部長のめがねにかなったサーバーは、富士通が4月6日に東京と米サンフランシスコ、ハンガリーのブタペストの3カ所で同時発表した基幹IA64サーバー「PRIMEQUEST」と、日立製作所が昨秋発表し4月から本格出荷を始めた統合プラットフォーム「BladeSymphony」である(表1[拡大表示])。

表1●各社のハイエンド・サーバー(OSとプロセサ)

 PRIMEQUESTは基幹業務市場でメインフレームやUNIXサーバーと覇権を争う戦略的な大型Linuxサーバー。米インテルのItanium2(IPF:Itaniumプロセサ・ファミリー:IA64)を搭載、LinuxをメインにWindowsも利用可能だ。2005年度に300~500台出荷、海外向け本格出荷が始まる2006年度は1000台を超す計画。半数以上が海外だ。2007年度は3000~4000台とさらに増やす。富士通は2007年にLinuxによる本格的な基幹業務市場が世界で3000億円になると見ており、この30%の獲得を狙う。

 一方、サーバーやストレージ、ネットワーク部を筐体内に統合したBladeSymphonyは、世界で初めてItanium2とIntel XeonMP(EM64T)の混在を可能にした。Windowsを主体にLinuxもサポートする。Webの3階層全域を1筐体に包括した運用管理の容易さが売りだ。従来に比べてTCO(所有総コスト)40%削減が可能としており、2年間で1000億円の販売を目指す。こちらも海外市場への投入を計画している。

両サーバーともにユニーク

 NS-SOLの甲斐マーケティング部長は、エンジニアリングの観点から、これらの新ハイエンド・サーバーを次のように分析する。「PRIMEQUESTは、サーバーにそこまで必要かというほどの徹底した二重化が施されている。IBMメインフレームのFT(無停止)システムであるシスプレックス的な特徴を持つ。信頼性や可用性を武器に、基幹メインフレームをLinuxに置き換えるレガシー・マイグレーションで威力を発揮するはずだ。一方、サーバーのスケールアップとスケールアウトが筐体内で同時に可能なBladeSymphonyは技術的にユニーク。システム構成の自由度が高い」。

 甲斐部長が言うサーバーのスケールアップ/スケールアウトとは、ハイエンド・サーバー分野での論点の1つである。


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