企業向けのデスクトップLinux製品が相次ぎ登場している。従来のLinuxはクライアントOSとしては使い勝手が悪かったが、大幅に改善した。具体的には、オフィス・ソフトなど主要なソフトが出そろい、操作性が向上、利用できる周辺機器も増えた。ただ、だれでも導入できるわけではないし、ベンダーが主張するコスト、セキュリティ、管理面のメリットは、必ずしもすべてのユーザーに当てはまるわけではない。デスクトップLinuxを導入できるのは一部に限られそうだ。

「去年までは見向きもされなかったが、今年に入って状況が変わってきた」。ターボリナックス 営業本部クライアントグループの中尾貴光部長は、企業向けデスクトップLinuxの市場を、こう説明する。
相次ぐセキュリティ・ホールの発覚と、それに伴う頻繁なパッチ当て作業、ファイル共有ソフトなどをユーザーが勝手にインストールしたことによる被害を食い止めるための施策…。ユーザー企業の情報システム部門は、クライアント管理の作業に追われている。そこで「Windowsに比べて手間がかからないクライアントOS」としてデスクトップLinuxに期待を寄せ始めたというのだ。中尾部長は、「数社が具体的に検討を始めた」と打ち明ける。
商機を見いだしたベンダーは、相次ぎ企業クライアントに特化した製品を投入している。
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図1●デスクトップLinuxを導入すべき理由 |
国産ベンダーであるターボリナックスは、あらためて企業向け製品を用意することはしない。しかし既存の「Turbolinux 10 Desktop」を対象に7月1日から、企業向けサポート・サービス「ターボサポートforクライアントCorporate」の提供を始めた。
導入に値する二つの理由
企業がデスクトップLinuxの導入を検討し始めた理由としてLinuxベンダーが挙げる項目を整理すると、大きく二つに分けられる(図1[拡大表示])。
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図2●Linuxで利用可能なアプリケーションの例。オフィス・ソフト、Webブラウザ、PIM(個人情報管理)/メール・ソフトと最低限のソフトはそろっている |
ただし、「Windows並み」だけでは、あえて導入する意味はない。そこでベンダーは、Windowsより有利な点を三つ挙げる。コストとセキュリティ、管理面である。セキュリティでは、ほとんどのウイルスやワームのターゲットはWindowsで、Linuxが狙われることは少ない点を強調する。管理面では、ネットワーク・ゲームやファイル共有ソフトといった業務の支障になるソフトがほとんどないため、ユーザーが勝手なことをしにくいとする。
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図3●産業技術総合研究所でデスクトップLinuxが導入可能な事務職員の割合。東京とつくばの事務職員1145人中153人(13.3%)にデスクトップLinuxが導入可能だと判定した。「電子政府におけるオープンソフトウェア活用に向けての実証実験フィジビリティ調査」による |
この結果、デスクトップLinuxの導入が可能だと考えられる事務職員の割合は13.3%だった。この数字をどう考えるべきか。以下、デスクトップLinuxの実力をベンダーの主張に沿って検証していこう。
解決しきれない互換性問題
従来と比べて使い勝手が向上した理由の一つとして挙げられるのが、アプリケーション・ソフトの充実である。
オフィス・ソフトでは、前述したStarSuiteやOpenOffice.org以外でも、ジャストシステムが同社のワープロ・ソフト「一太郎」のLinux版の開発を進めている。今年末には販売する計画だ。
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