広告などを一方的に送りつける迷惑メール(スパム)が、ネットワーク社会を脅かしている。その問題を解決するのが、迷惑メールを検出、遮断する技術と、それを組み込んだ「迷惑メール対策ソフト」だ。これらは一定の効果を上げているが、対策の網をくぐり抜けて迷惑メールを配信し続ける業者も多い。迷惑メールとの戦いはまだ続く。

(坂口 裕一)


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 仕事に欠かせない道具となった電子メールが迷惑メール(スパム)に脅かされている。企業に迷惑メールが大量に届くと、迷惑メールと必要なメールを選別する作業に時間をとられたり、電子メール・サーバーがいっぱいになって必要なメールが届かなくなったりする。

 日本ではこの問題はさほど切実に感じられないかもしれないが、米国では社会的問題に発展している。2003年末には迷惑メール送信者を禁固刑にしたり、最高で600万ドル(約6億4000万円)の罰金を科す厳しい法律が成立したが、これで問題が解決すると見る向きは少ない。「メールという通信手段が将来、使えなくなるかもしれない」、「迷惑メールを根絶するためにメールの有料化を考えるべき」といった論調まで出てくるありさまだ。

図1●@nifty(アット・ニフティ)の会員が電子メールを送信したところ、迷惑メール(スパム)対策ソフトを導入した企業のメール・サーバーに受信を拒否された。スパムを送信するメール・サーバーであるとして@niftyのメール・サーバーが、「ブロック・リスト」に登録されていたのが原因だった
 迷惑メール対策ソフト・ベンダー、クリアスウィフトの宮本哲也シニアマーケティングマネージャーは、「海外拠点やcomアドレスを持つ企業、業種でいうと商社やメーカーなどで迷惑メール対策ソフトを導入するケースが増えている」と話す。日本IBMは、自社のグループウエア製品Notes/Dominoの迷惑メール対策機能を利用している。「一般的な社員が1週間に数百通のメールを受信する。米国本社とのやり取りが多いので、英語のメールだからといって読まないわけにもいかない。こうした状況で迷惑メールが増えると、業務に大きな支障を来す」と、日本IBMの松尾邦夫ソフトウェア事業部クロス・ブランド事業推進製品企画ITスペシャリストはいう。

必要なメールが届かない

 迷惑メールが原因で必要なメールが届かないという事態は実際に起こっている。2003年12月、ニフティが運営するインターネット接続サービス「@nifty」の会員が、ある企業の社員にメールを送ったところ、ある企業に受信を拒否された(図1[拡大表示])。

 スパムを送信するメール・サーバーのリストを提供するWebサイト「spamcop」に@niftyのメール・サーバーの一つが登録されており、送信先企業が導入していた迷惑メール対策ソフトが、spamcopのリストを参照して、迷惑メール送信業者を判別していたのがその原因だ。この件についてニフティは、「spamcopはだれでも迷惑メール送信サーバーとして登録できる。なぜ当社のサーバーが登録されてしまったのかは、わからない。通常は登録されると通知のメールがニフティへ届き、すぐに解除する手続きをとっている。今回はたまたま解除の手続きが遅れた」(広報)と説明している。

図2●迷惑メール対策ソフトは、ゲートウエイ・サーバーとメール・サーバーの2段階で迷惑メールを検出する。受信者が設定を随時変更することで、迷惑メールの検出精度を高められる
迷惑メール対策ソフトが続々登場

 迷惑メールがクライアント・パソコンに届く前に検出、除去して、業務に影響しないようにするのが、迷惑メール対策ソフトである。2003年後半から最新の迷惑メール対策技術を盛り込んだ新製品が続々と登場している。迷惑メール対策ソフトは一般的に二つの段階で迷惑メールがクライアント・パソコンに届くのを防止する(図2[拡大表示])。

 第1段階では、メール・サーバーの前段に置いたゲートウエイ・サーバーでメールのヘッダー情報を分析して迷惑メールを排除する。迷惑メールのヘッダー情報は、送信元が特定されないように工夫されている。そのため、送信元のドメイン名が実在しない、通常よりも多いメール・サーバーを経由している、などの特徴を持つ。そうした特徴があれば迷惑メールと判断できるというわけだ。


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