オフショア開発が急拡大する一方で、中国やインドのITベンダーには、「安かろう、悪かろう」のイメージがつきまとう。だが、いつまでも「安価な下請け」扱いしていると、国内ベンダーは足元をすくわれかねない。中国40万、インド65万を数える、両国のITエンジニアの実力を現地取材に基づき報告する。

(大和田 尚孝)

素顔●高給目指してエリートが集結
実力●「安かろう・悪かろう」は、もう古い
特訓●恐るべき、ITエリート育成の力
攻勢●1万3000社が日本を狙う


【無料】サンプル版を差し上げます本記事は日経コンピュータ2005年5月2日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 近くて遠い国、中国。そしてインド。両国のITベンダーでは、現在4万人のITエンジニアが日本向け案件に従事している。ここ数年、国内ベンダー各社がオフショア開発を急拡大させた結果、その数は急速に増えつつある。

 最近の中国・反日デモで冷や水を浴びせられた格好だが、中長期的にオフショア開発は拡大の一途をたどるだろう。ユーザー企業からの値下げ要求をクリアするには、開発単価が日本の半分以下で済む中印ベンダーの活用が避けて通れないと、各社は判断している。 

 中国とインドのソフト/情報サービス産業の日本向け輸出額は、今年2500億円に達する見通しだ。これまで通り年率30%ペースの伸びが続くと仮定すると、4年後には中印ベンダー全体では、NTTデータに匹敵するポジションを日本のIT市場で占める計算になる。

 その一方で、中印ベンダーに対しては、「安かろう、悪かろう」のイメージが抜けきらない。国内ベンダーの幹部やエンジニアは、「確かに安いが、成果物の品質は、日本企業が求める水準に達しない」、「任せられるのはプログラミングと単体テストだけ。上流の要件定義と最後の品質保証は、日本側でしかできない」と異口同音に指摘する。

 しかし、いつまでも中国とインドを「安価な下請け」扱いしていると、足元をすくわれかねない。中国40万人、インド65万人のITエンジニアたちは、現地の平均年収の10倍以上を稼ぐエリート集団。理工系大学でソフトウエア工学やプロジェクトマネジメント手法の基礎をたたき込まれた秀才が、競争率数10倍を超える難関を乗り越え、ITベンダーに入社する。

 その精鋭たちに、中印ベンダーは徹底した研修を施す。入社後1年間の新人研修が2200時間超と、日本の法定労働時間を上回るところもあるほどだ。

 この圧倒的なバイタリティとパワーの前に、これまで国内ベンダーを保護してきた「言葉の壁」が崩れ始めている。「日本語を身に付ければ年収倍増も夢ではない」とあって、中国やインドのエンジニアは日本語や日本の商習慣を必死で勉強する。彼らが、日本企業の求める品質やきめ細かさを身に付ける日も、そう遠くはないはずだ。

 すでに一部のユーザー企業は、中印ベンダーの潜在能力に気づき始めた。国内ベンダーをパスして、中国やインドにシステム開発を直接発注する動きが水面下で広がっている。

 反日デモなどのリスク要因を考慮しても、日本のIT業界にとって、みなぎる中印ITパワーは今後、無視できない存在になる。現地取材に基づき、その実力を報告する。


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