米ヒューレット・パッカード(HP)が「デル・モデル」をゲット――。HPは同社のCIO(最高情報責任者)に、米デルの元CIOだったランドール・モット氏を招へいして、社内のITインフラの立て直しを図ろうとしている。モット氏は米ウォルマート・ストアーズで22年間にわたって情報システムに携わり,1997 年には米InformationWeek 誌の“CIO of the Year”に選出されたこともある人物。2000年2月に米デルのCIOに就任した後は、同社のサプライチェーン・マネジメント(SCM)をさらに洗練して直販と組み合わせた、いわゆる「デル・モデル」の強化に貢献した。

 モット氏をデルから引き抜いたのは、米NCRからHPに移った新CEOのマーク・ハード氏と言われている。ハード氏はNCR時代、ウォルマートとデルの両社にTeradataを使ったデータ・ウエアハウス・システムを納入。両社でCIOを務めていたモット氏の手腕を見込んで、HPでのCIO職を任せたと見られる。

 HPにとって、デルは最大のライバルの一社。旧コンパック時代から現在に至るまで、パソコンやパソコン・サーバー、ストレージなど、主要な製品分野で常に競合してきた苦々しい存在だ。「デルはビジネスを割り切っている。徹底的にプロセスを標準化・効率化して、ハードウエアを低価格で売りさばく。確かに効果は上がっているが、プロセスは決まり切っていて、ひたすら数字を追うだけ。社員からすれば何の面白みもない」(HP社員)。

 HP社員がこう評するデルのビジネスを具現化したのがデル・モデルだ。HPは2004年、米国内の受注管理システムの刷新に失敗し、9200万ドルの営業損失を計上。上級副社長3人を更迭するなど、社内オペレーションでの混乱が続いている。デル・モデルの推進者だったモット氏を引き抜いたことで、HPはどう変わるのか。今後の動向が注目される。

玉置 亮太=日経コンピュータ