ICタグの標準化団体、EPCグローバルでプレジデントを務めるクリス・アドコック氏(写真)が日経コンピュータの取材に応じ、「今後1年間は消費者の誤解を解くのに全力を尽くしたい。そのための予算も確保した」とICタグのプライバシ侵害疑惑の解消に向けた決意を語った。

 ICタグ導入企業は、これまでプライバシ保護団体からたび重なる抗議を受けてきた。こうした抗議の多くは、商品に添付したICタグが、消費者の行動追跡に使われるのではないかという疑念に基づく(関連記事)。

 ICタグの普及にはこうした疑念の払拭が必要だ。そこでEPCグローバルは今後、各国で大規模なキャンペーンを展開する予定だ。アドコック氏は、「ICタグ本来の目的が伝わらないまま誤解が広まっている。7月から始まった新年度ではかなりの予算を割く」と話す。

 同氏は、プライバシ保護のために企業が守るべき原則は四つあるとする。店頭で消費者にICタグの存在を知らせること(Consumer notice)、ICタグを利用しない選択肢を与えること(Consumer choice)、正しい知識を与えること(Consumer education)、そしてデータ保全(Record use, Retention and security)である。

 EPCグローバルはこうした原則を545の会員企業、団体が守るよう徹底していく。その上で、消費者に対してICタグ本来の目的や、プライバシ保護に向けた活動を、秋以降テレビ広告などを通じて紹介する予定だ。

 アドコック氏は、最新のICタグ標準化状況についても説明した。

 昨年12月にEPCグローバル内部で、UHF帯対応ICタグの仕様が「クラス1ジェネレーション2(Gen2)」として標準化された。同団体がこの仕様を基に、ISO(国際標準化機構)に6月に提出した規格案は、来年3月にも「ISO 18000-6 タイプC」として承認される見込みだ。

 ICタグの物理仕様の標準化が一段落したことで、「次はネットワークの年になる」(アドコック氏)。今後1年は、ICタグのデータ交換を支えるネットワーク仕様の標準化に注力する。異なる企業が持つ商品データベースを接続し、世界規模でデータの検索や相互交換を可能にするONS(Object Naming Service)のアーキテクチャ策定が焦点になる。

(本間 純=日経コンピュータ