NECは6月27日、コールセンター向けの音声認識ソフト「VisualVoice」を発表した。これまでの音声認識技術では、新聞記事やマニュアルなどの整形した文章や単語しか認識できなかったが、独自開発した認識エンジンにより、無駄な言葉や雑音の多い日常的な会話の内容も認識できるようにした。

 「コールセンターの処理能力は、オペレータの数に比例する。コストを抑えつつ処理能力を高めるには、応対記録の入力を自動化するなど、オペレータの作業を効率化するしかない」。NECの市場開発推進本部の塩川正二本部長は、コールセンターにおける声認識ソフトの有効性をこう強調する。

 VisualVoiceは、オペレータと顧客のすべての会話内容を自動的にテキスト・データに変換して、これまでは手作業に頼っていた応対記録の入力作業を自動化することができる。会話を常時モニタリングし、「障害」や「事故」といった緊急性の高いキーワードが発せられた場合だけテキスト・データに変換し、同時に上司や危機管理担当者に通知するといった仕組みも作ることが可能だ。

 会話を正しい文字列に変換できる確率(認識率)は70~80%。この点に対して塩川本部長は、「実用上は問題ない。認識用の辞書を整備するなどシステムをチューニングすれば、さらに5~10%認識率が向上する」としている。

 コールセンターにおける音声認識ソフトの活用は、音声認識分野で急成長しているソフト・ベンダーのアドバンスト・メディアなどが、すでに大手コールセンター事業者と共同実験を始めている。NECは後発となるが、「コールセンター事業者はもちろん、NECが得意とする金融、製造、自治体のコールセンターに売り込んでいきたい」(同)。今後3年間で、200システムの販売を見込む。

 VisualVoiceの価格は、会話内容をすべてテキスト化する「オペレータ支援用」、特定のキーワードを検知する「スーパーバイザー支援用」が、それぞれ400万円(20席)から。これらをセット化した「コンタクトセンター支援用」が600万円(同)から。システムの設定や教育などの導入サービスは650万円から。出荷は9月末を予定。

(目次 康男=日経コンピュータ)