「世界一速い、稼働中のスーパーコンピュータはどれか」の基準として知られる、TOP500プロジェクトの最新ランキングが6月22日、同プロジェクトのWebサイトで公表された。

 今回も首位は、2004年11月に発表された前回(第24回)ランキングで初めて首位に浮上した、IBM製のBlueGene/L(米エネルギー省ローレンス・リバモア国立研究所所有)。IBMは今年3月に、BlueGene/L(2004年11月時点ではPowerPC 700MHzプロセサを3万2768個搭載、70.72テラFLOPS)のプロセサを倍増し、135.3テラFLOPSを実測したと発表していた。今回の公表値では136.8テラFLOPSでの首位となっている。

 2位は、今回のランキング発表の直前に米IBMが「民間所有では世界最高速」と発表したWatson Blue Gene(91.29テラFLOPS)。3位は前回2位に食い込んだ米シリコン・グラフィックスのColumbia(NASAエイムズ・リサーチ・センター所有、51.87テラFLOPS)。

 前々回まで5回連続首位を保ってきた日本の地球シミュレータ(35.86テラFLOPS)は、Watson Blue Geneにも抜かれ、前回の3位から4位に後退した。

 以下、5位にIBM製でスペイン・バルセロナ・スーパーコンピュータ・センターのMareNostrum(PowerPC 2.2GHzを4800個搭載するクラスタ機、27.91テラFLOPS。前回は3564プロセサ構成で20.53テラFLOPSの4位)。6位、8位、9位もIBM製Blue Geneが奪った。6位はオランダ、8位は日本の産業技術総合研究所(AIST)生命情報科学研究センター、9位はスイスに設置されたBlue Geneである。

 残る7位はローレンス・リバモア研所有のThunder(Itanium2 1.4GHz 4096プロセサ。カリフォルニア・デジタル社製)、10位は米サンディア国立研究所のRed Storm(クレイXT3の5000プロセサ構成)だった。

 TOP500ランキングは、行列形式の連立一次方程式を解くプログラムで主に64ビット浮動小数点演算の性能を測る「LINPACKベンチマーク」を実機のコンピュータ上で実行し、その実測値を独マンハイム大学、米テネシー大学などが主催するTOP500プロジェクトがまとめている。1993年から半年ごとに集計結果が公表されており、今回は第25回の発表である。

 ただしLINPACKベンチマークは、BlueGene/LやColumbia(Itanium2 1.5GHzを1万160個搭載)のように汎用プロセサを多数搭載するスカラー型並列コンピュータにとって、性能を高めるチューニングがしやすいとされる。

 スカラー型機はノード(プロセサ)間やノードと外部記憶の間の伝送能力が、地球シミュレータ(NEC SX-6相当のプロセサを5120個搭載)に代表されるベクトル型並列機と比べて相対的に低い。だが、LINPACKのプログラムは、分割して並列処理しやすく、また性能計測の際に主記憶容量に見合った最適な条件を選べる(外部記憶への入出力を実行しないですむ)ためだ。

 計算流体力学や有限要素法など、実際に産業界で利用されているスーパーコンピュータの応用プログラムでは、ベクトル型並列機の性能が、LINPACKでの結果よりも高めに評価されると言われている。

千田 淳=日経コンピュータ

【訂正】記事掲載当初、「8位はスイス、9位は日本の北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)に設置されたBlue Gene」としましたが、日本での設置先はTOP500プロジェクトの当初の発表の間違いで、正しくは「産業技術総合研究所(AIST)生命情報科学研究センター」でした。  なお、8位と9位のBlue Geneは同一構成で同性能(18.20テラFLOPS)のため、TOP500プロジェクトが公表した訂正版ランキングでは、8位が産総研のBlue Gene、9位がスイス・ローザンヌ連邦工科大学のBlue Geneとなっています。以上、お詫びして訂正します。