野村総合研究所(NRI)は6月14日、今年3月から5月に実施した中国のIT産業についての調査結果を発表した。中国におけるオフショア開発・運用の市場規模は2004年で3000億円。その半分にあたる1580億円が日本企業向けだ。NRIは、2008年に日本企業向けのオフショア開発・運用の市場規模が、現在の4倍にあたる6940億円まで増えると予測する。2004年時点で、日本のソフト開発・運用市場の規模に対する中国オフショア開発の割合は1.5%に過ぎなかったが、2008年にその割合は4.9%まで上昇するという。

 中国の人件費は、プログラマの場合月額25万円、一般SEで40万円、上級SEやプロジェクト・マネジャでは80万円だった。それぞれ65万円、140万円、200万円の日本に対して、3分の1程度の人件費で済む。NRIは「仮に人民元の切り上げが5~10%程度あっても、日中の人件費コストの差を考慮するとその影響は微々たるもの。今後もオフショア開発は増え続ける」(桑津浩太郎上席コンサルタント)とする。

 現在オフショア開発中のシステムが稼動する2~3年後から、徐々に日本企業から中国ベンダーへの運用委託や追加開発が増えることが、市場規模増大の一因だ。桑津上級コンサルタントは、「中国との競争にさらされることで、日本のプログラマ、SEの賃金は低く抑えられるだろう。4.9%という数字は、見た目の印象より大きな影響力を持つ」とする。

 今回NRIが発表したのは、中国における携帯電話機、携帯電話サービス、モバイル・コンテンツ、パソコン、サーバー、ストレージ、ITサービスの7分野の市場動向。NRIはこのうち、システム開発や運用といったITサービスの市場規模について、2004年に日本の10分の1にあたる1兆4840億円だったが、今後2010年まで年率20~30%の伸びを維持すると予測する。同社は、オフショア開発を中国ITサービス市場のけん引役と位置付けている。

本間 純=日経コンピュータ