住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)は、憲法が保障するプライバシー権や人格権を侵害する恐れがあるとする判決が下った。石川県の住民28人(原告)が国と県、住基ネットを管理する地方自治情報センター(被告)を訴えていた裁判で、金沢地方裁判所は5月30日、原告の訴えを大筋で認め、被告に住基ネットから原告の個人情報を削除するよう命じた。井戸謙一裁判長は、原告が要求していた一人当たり22万円の損害賠償は棄却した。同様の集団訴訟で判決が出たのは全国で初めて。

 原告の岩淵 正明弁護士(北尾法律事務所)は今回の判決について、「至極当然のもので、全面勝訴と受け止めている」と本誌にコメントしている。一方の総務省は、「まだ詳細を承知していないが、住基ネットに理解が得られず、石川県などの主張が認められなかった部分があることは極めて遺憾。関係機関と相談し、しかるべき対応をしたい」(自治行政局市町村課)と、控訴を示唆した。

広岡 延隆=日経コンピュータ