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 個人用のスーパーコンピュータの開発を手がけるベンチャー企業の米オライオン・マルチシステムズは5月18日、日本市場に製品を投入すると発表した。同社のコリン・ハンター社長は、「家庭用電源だけで、96ノード構成のPCクラスタと同等の作業を実施できる」と自負する。科学技術計算や金融のシミュレーション、製造業の流体解析などの用途向けに売り込む。

 同社製品は、複数台のパソコンで処理を分散することで性能を高める「PCクラスタ」の技術を応用する。1枚のプロセサ・ボードに12台のパソコンの主要コンポーネントを搭載した。x86系プロセサ、チップセット、主記憶、2.5インチ・ディスク・ドライブ、ネットワークI/Oなどを一つの単位(ノード)として12個ずつ詰め込んだ。これにより、12ノード分のPCクラスタを一つのマシンで実現する。ノード間のデータ転送には、1ギガビット/秒のイーサネットを使う。

デスクサイド版 電源として、通常の家庭用のコンセントを使用する。通常、数十ノード構成のクラスタでは電源装置や空調などを完備したマシン・ルームを用意しなければいけないが、その必要はないという。消費電力を200ワット程度に抑えたからだ。「省電力のノート・パソコン用プロセサを採用したり、独自開発したファームウエアで規定値以上に電力を消費しないようにしている」(ハンター社長)。

 製品は、(1)12ノード(ボード1枚)を格納した「デスクトップ版」と、(2)96ノード(ボード8枚)を格納した「デスクサイド版(写真)」の2種類。(1)はピーク性能が28GFLOPS、持続性能が14GFLOPS。(2)はそれぞれ、230GFLOPS、110GFLOPSだ。寸法は(1)が約61(幅)×約46(奥行き)×約10(高さ)cm。(2)が約43×約64×約69cm。価格は、(1)が1万ドル程度、(2)が10万ドル程度。

 現在、同社は国内での販売パートナーを選定している。スパコン大手のクレイ製品を販売するベスト・システムズが有力候補という。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ