プラント大手の東洋エンジニアリングは今年6月にも、新日鉄ソリューションズ(旧新日鉄情報通信システムズ)のパソコン・サーバー「ENI390」を撤去する。国内に残った最後の1台の撤去で、ENI390は日本中から完全に姿を消す。

 ENI390は、IBM製メインフレームで動作するミドルウエアや業務アプリケーションを、そっくりそのまま動かせるのが売りの小型サーバー。IBM製の専用カードを組み込んだ「OS/2」搭載のパソコンだが、その用途から「パソコン・メインフレーム」と呼ばれる。

 ENI390は1997年に誕生した。当時、小型メインフレームのラインアップが不足していたIBMは、OS/2搭載パソコンでメインフレームのアプリケーションをそのまま動作させる専用カードを開発した。メインフレームで動く小さなアプリケーションを安価なサーバーにダウンサイジングしたい顧客の需要を取り込むためだ。IBMから専用カードのOEM提供を受けた新日鉄ソリューションズが販売したENI390は、アプリケーションに手を入れずにメインフレームをリプレースできることが受け、利用企業は累計で70社に上った。

 ところが、パソコン・メインフレームの需要は次第に減少。2000年12月には、IBMからENI390の心臓部と言えるP390カードの供給停止の連絡を受けた新日鉄ソリューションズはENI390の新規販売を停止。利用顧客には事前に通知した上で、2003年3月には保守サポートも停止した。

 東洋エンジニアリングは2003年に、ENI390サーバーで動かしていた売掛金回収システムや人事システムの刷新計画を立て始めた。だが「ユーザー部門が同システムにほぼ満足していた」(eソリューション事業本部システム企画グループの谷村恭子氏)ため、刷新のよい口実が見つからず予算の確保に苦しんだ。他のシステム案件を優先しているうちに、気が付けば同社が国内最後のENI390ユーザーになっていた。

 2004年に入り、東洋エンジニアリングは「レガシー・マイグレーション」でENI390で動く売掛金回収システムをUNIXサーバーに移植する計画を立てた。変換ツールを使うことで、「再構築やパッケージ・ソフト導入よりも安価に移行できる可能性が見えた」(谷村氏)からだ。

 今回のマイグレーションは新日鉄ソリューションズが手がけた。ジェイ・クリエイションの「ビーナス」で、COBOLプログラム44本と第四世代言語「CSP」で書かれたプログラム96本をJavaに変換した。画面定義体103本はJSP(Java Server Pages)に、JCL(ジョブ制御言語)14本はシェル・スクリプトに、それぞれ置き換えた。

 変換率が「オンライン・プロプラムで90%以上、バッチ・プログラムは99%」(ジェイ・クリエイションの森田憲明氏)と高かったこともあり、「具体的な金額は明かせないが、計画通り安価に移行できた」(谷村氏)。売掛金回収システムは今年1月に移行完了。人事システムも今年3月にワークスアプリケーションズの「COMPANY」に移行している。

大和田 尚孝=日経コンピュータ