「先行投資の山場は越えた。各事業分野で顧客基盤も確立でき、事業をまたがった相乗効果も表れ始めた」。ソフトバンクは5月10日、連結決算を発表。その会見で、孫 正義社長はこう口火を切った。同社の2004年度(2005年3月期)の連結決算は、売上高が8370億円で前年度比62%の増収。営業利益、経常利益などでは赤字が続くものの、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)では440億円の黒字(前年度比660億円増)となった。営業損益も253億円と前年度比で295億円改善。孫社長は、「おとくラインを除くと営業利益は161億円で、実質的に黒字転換したと言える」と説明する。

 業績改善は、ADSL(非対称ディジタル加入者線)などのブロードバンド・インフラ事業、ポータル(Yahoo!)などのインターネット・カルチャー事業、イー・トレード証券などのイーファイナンス事業、ソフト販売を中心とするイーコマース事業によるところが大きい。ブロードバンド・インフラ事業は、営業利益、EBITDAともに赤字が続くものの、大幅に改善。ブロードバンド、固定通信を除く事業は、営業利益が前年度からほぼ倍増の644億円と好調である。

 ブロードバンド事業でも、EBITDAは590億円改善し、40億円の赤字にとどまった。さらに、2004年度第4四半期だけを見ると、営業利益は19億円、EBITDAでは83億円の黒字を達成している。ブロードバンド事業は課金対象のユーザー数を着実に増やす一方で、顧客獲得コストが減少傾向に転じた効果が表れたという。この業績改善を受けて、孫社長は、「2005年度は、通期でEBITDA、営業利益、経常利益とも黒字化する」と強気な姿勢を見せた。設備投資と顧客獲得コストが大きく、現時点では足を引っ張る存在のおとくラインについても、「2005年度中には月次で黒字化できる見通し。通期でも、早い段階で黒字を達成できる」と自信を見せた。

 もちろん、ブロードバンド事業では、膨大な設備投資を続けざるを得ない。FTTH(ファイバ・ツー・ザホーム)、1.7GHz帯の携帯電話事業をこれから展開していく計画だからだ。この点について、孫社長は、「ADSLなどで得られる収益は大きくなるはずで、FTTHなどへの設備投資を勘案しても黒字は達成できるはず」と説明。イーコマース事業やインターネット・カルチャー事業、イーファイナンス事業はいずれもすでに黒字であるため、2005年度は連結でも営業利益を黒字化するとした。

河井 保博=日経コンピュータ