東京ガスが2002年末から進めてきたIP電話の導入が、2005年3月に一段落したことが、日経コンピュータの取材で明らかになった。

 全部で79ある拠点間の電話通信をIP化したほか、拠点間を結ぶWAN(広域ネットワーク)の回線をすべて2重化する作業が完了した。一部拠点は構内の通信もIP化しており、全社で約3100台のIP電話機を動かしている。ほかの拠点については、PBX(構内交換機)が老朽化したところから電話端末をIP化する作業を順次進める。

 2002年末に発表された東京ガスのIP電話導入計画は、拠点を広域イーサネット・サービスやBフレッツを使って構築したWANで結び、拠点間の電話通信をIP化するというものだった。IP電話の呼制御と外線との着発信には、フュージョン・コミュニケーションズが提供するIPセントレックス・サービスを利用し、最終的にはほぼすべての拠点でPBXを撤去し、拠点内もIP電話化する予定である。

 ただし、3月時点で電話端末まで完全にIP電話化した拠点は全部で14にとどまる。このうちの6拠点は新設、PBXを撤去してIP電話を導入した拠点は8拠点である。残りの65拠点については、従来利用していたPBXを残している。これらの拠点はゲートウエイ装置を使って電話通信をIP化し、WAN経由でIPセントレックス・サービスにつなげている。

 つまり現状では、拠点内の内線通話の多くは従来通りPBXを利用する形になっている。すべての拠点にゲートウエイ装置を導入したのは2004年の3月である。「この1年は、新規拠点の構築作業と、小規模拠点のWAN回線を2重化する作業を行っていた」(東京ガス情報通信部の黒岩昇氏)。こうした一連の作業を完了したのが今年の3月だった。

 計画を実行段階で一部見直し、段階的なIP電話化に変更した理由は2つある。1つは経済性。「利用年数が短いPBXを廃棄すると償却損が出る。当初計画には見積もりの甘い部分があった。IP電話化とPBXの継続利用の両方をきちんと検討して、経済的な方を選択した」(黒岩氏)。

 もう1つは緊急通信などへの対応だ。「コール・センターなど一部の拠点では停電時も通話を受け付ける必要がある。現時点のIP電話はまだ、こうした用途に耐えないと判断した」(黒岩氏)。

 このような見直しを実施した結果、IP電話化による通信費コストダウン幅は当初試算の50%に届かず、40%にとどまった。黒岩氏は「今後、古いPBXから破棄して、順にIP電話化していく。リプレースが終了すれば最終的には試算に近い効果が得られる見込み」と語る。

山田 剛良=日経コンピュータ