情報処理推進機構(IPA)は2006年3月までに、企業のIT部門の人材などに求められるスキルやキャリア(職業)を指標化したITスキル標準(ITSS)の次期バージョン「ITスキル標準ver.2.0」を策定する。ITSSは本来、企業や個人の人材育成のツールだが、実際には趣旨が誤解され、社員の評価制度のモデルに使われているケースが多い。ITSSに関する既存の解説書の表現を分かりやすくするほか、経営層に理解を深めてもらう解説書も新規に作成する。

 ITSSは11職種38専門分野ごとに、7段階のスキル・レベルを設定している。レベルごとに要求される業務経験、実務能力や知識を定義している。ITSSは以前に比べて認知度は上がってきたが、使い方に関する誤解も多い。IPAのITスキル標準センター企画グループの鈴木俊男グループ・リーダーは、「経済産業省が当初狙っていたのは、ITSSを企業や個人の人材育成のツールとして活用してもらうことだった。しかし、現状は社員の給与査定や人事制度のモデルのみに使われているケースもある」という。

 IPAは7月までに、ITSSを理解しやすいように解説を改訂する。同時に、スキル標準の改訂提言を作業部会でまとめて公表する。

 ITSSの使い方が本来の趣旨とかい離した要因には、経営者が正しく理解していないこともある。IPAは優秀な人材を育成・確保する重要性を経営者に説明することが必要と判断、「経営者向けITスキル標準概説書」を今年10月までに作成する。現在、一般向けの解説書はあるが、経営者向けの解説書はなかった。鈴木氏によれば、「ITSSをうまく使っている企業は経営者がトップダウンで導入している。トップが関与しない企業はITSSがうまく機能しない」と分析している。

安藤 正芳=日経コンピュータ