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マカフィーのボーリンCTO 「ウイルスやスパイウエア、アドウエアといった悪意のあるソフト(マルウエア)に関する報告を、当社は1日当たり1000件から1万件受ける。中でも、最近目立つのはスパイウエアやアドウエア。現在では、それらが全体の3分の2を占める」。米マカフィーでエグゼクティブ・バイスプレジデント兼CTO(最高技術責任者)を務めるクリストファー・ボーリン氏(写真)は、こう語る。

 スパイウエアは、パソコン内の個人情報などを収集してマーケティング会社に送るソフト。ほかのアプリケーション・ソフトとセットでインストールされることが多い。ユーザーに気づかれないようにするため、ウインドウを出さずに動作するなど、巧妙な作りになっている。アドウエアは、ユーザーの画面に強制的に広告を表示するソフトを指す。

 ボーリン氏によれば、「今年1月~3月のウイルスやスパイウエア報告件数は過去最高。ただし、ウイルス対策ソフトが普及したことで、企業が被害に遭うケースは減る傾向にある。企業が対策に費やすコストも減少傾向にある」。

 代わりに増えているのが、スパイウエアやアドウエアの被害件数。ウイルスは悪意あるユーザーが自分の実力を誇示するため作ることが多いが、「スパイウエアやアドウエアはソフトウエアの脆弱性を突くため、より巧妙になってきている」(ボーリン氏)。マカフィーの調査では、スパイウエアやアドウエアがインストールされたパソコンには、同種のソフトが平均7~10種類存在するという。

 そこでマカフィーは今年3月、同社が提供するウイルス対策ソフト「VirusScan Enterprise」にアドオンするスパイウエア/アドウエア対策ソフト「McAfee Anti-Spyware Enterprise」の提供を始めた。ソフトウエアの挙動を分析してプロセスを止める機能や、Windowsのレジストリをスキャンする機能を備える。価格は1ユーザーあたり年間1980円で、ボリューム・ディスカウントもある。同社はこのほか、企業向けスパイウエア対策として、定義ファイルのアップデートなど社内でパソコンを一括して管理するソフト「ePolicy Orchestrator」を提供している。

 ボーリン氏は、スパイウエアやアドウエアだけでなく、ウイルスの進化も危ぐする。「フロッピからメール、ネットワークと、ウイルスは感染経路を進化させてきた。今後出回りそうなウイルスはVoIP(ボイス・オーバーIP)やIM(インスタント・メッセージング)、PtoP(ピア・ツー・ピア)を介して感染するウイルスだろう」と予想する。

安藤 正芳=日経コンピュータ