富士通は4月6日、大型Linux/Windowsサーバー「PRIMEQUEST(プライムクエスト)」を発表した。PRIMEQUESTはインテルの64ビット・プロセサ「Itanium 2」を採用。チップセットなどその他のハード構成要素はすべて富士通が自社開発した。富士通の黒川博昭社長は、PRIMEQUESTを指して「メインフレーマによるオープンへの挑戦」と語る。「富士通のメインフレーム開発技術を惜しみなく投入し、メインフレーム並の可用性を追求した」(山中 明 経営執行役サーバシステム事業本部長)。

 その表れが、PRIMEQUESTの最大の特徴である「二重化同期アーキテクチャー(Dual Sync. System Architecture)」だ。チップセットやメモリー、クロスバーといった主要な構成要素を二重化し、システムの動作を2系統で同期させる「システムミラー機構」を搭載する。

 例えばメモリーの片方が故障した場合、故障した側を切り離し、正常なメモリーに処理を切り替える。この処理はナノ秒の時間で済むという。「ハードウエアの側ですべての処理を済ませるので、OSやアプリケーションの動作には影響を及ぼさない。だから、顧客のアプリケーション資産には手を入れる必要がない」(山中本部長)。

 障害の検知については、メインフレームを上回る15万カ所でチェックする。富士通のメインフレーム「GS」シリーズの場合は10万から12万。PRIMEQUESTの開発チームを率いた河部本 章 サーバシステム事業本部 基幹IAサーバ事業部長は、「各種の工夫により、ハードの信頼性についてはメインフレームと同等かそれを上回る」とアピールする。

 大手ユーザー企業はすでにPRIMEQUESTの可用性に注目しており、トヨタ自動車が実機の評価を開始しているという。

 PRIMEQUESTを開発するために、富士通はプロセサ・ベンダーのインテル、OSを提供するレッドハットやマイクロソフトと密な連携をとった。例えばプロセサについては、富士通は随時インテルからItanium 2の開発情報の提供を受け、そのうえで富士通側からは、エラー訂正など信頼性や可用性にかかわる機能について、要望や仕様の改善案を提示した。河部本事業部長は「先方は非常に協力的だった。このような取り組みは初めてのことだったが、大変満足な結果が出た」と語る。

 黒川社長や山中本部長はPRIMEQUESTのライバルを「(米)IBMの『zSeries』」と“名指し”する。同機はLinuxが動作するメインフレーム。PRIMEQUESTは開発時「Linuxメインフレーム」などと呼ばれていた。

 富士通が目指しているPRIMEQUESTの全世界での販売目標は、3年間で1万台。うち6割から7割が海外での需要と見ている。

 投入するのは2機種で、プロセサを最大32個搭載できる「PRIMEQUEST 480」と、最大16個の「PRIMEQUEST 440」。出荷は6月から。稼働OSはレッドハットの「Red Hat Enterprise Linux AS」、ノベルの「SUSE LINUX Enterprise Server 9」、マイクロソフトの「Windows Server 2003」の3種類。価格は480が4180万円から、440が2180万円から。

高下 義弘=日経コンピュータ