インテル日本法人は4月1日、公正取引委員会から受けていたパソコン用CPU販売での独占禁止法違反の排除勧告を応諾した。公取委が問題視した競合メーカー製品の採用比率を目標値とする条件付き値引き販売については事実関係を認めていないが、「パソコンメーカーとインテルが審判などの手続きに長期間さらされることを回避するため」(インテル日本法人)、排除措置を受け入れることにした。国内パソコンメーカーへの配慮から、「名より実を取った」格好だ。

 公取委は3月8日、インテル日本法人に対し、NEC、富士通、東芝、日立製作所、ソニーの国内パソコンメーカー5社との条件付き値引き販売を私的独占の禁止と認定、排除勧告していた。諾否の通知期限は3月18日だったが、インテル日本法人は「勧告の内容の精査にあたり、さらに時間が必要」とし、公取委に通知期限の延長を申請、了承を受けていた。

 問題視された取引は、パソコンメーカーの製品に占めるインテル製CPUの割合を示す「マーケット・セグメント・シェア(MSS)」に目標値を設定し、それを条件とする値引き販売。5社のうち、3社とは「MSSを100%にする」という条件で、1社とは「MSSを90%にする」、残る1社とは「生産数量の多い2つの製品群に他社製CPUを採用しない」という目標を設定していたという。現行モデルでは東芝、ソニーの製品が100%インテル製で、日立もタブレット型1機種を除くとすべてインテル製を採用している。公取委はこの取引により、日本AMDなどのライバルメーカーをパソコン用CPU市場から閉め出し、競争を実質的に制限していると指摘していた。

 インテルは「勧告にはインテルの商行為の重要な点について誤解があり、またインテルやその顧客が競争にさられている厳しい環境が考慮されていない」と、公取委の排除勧告の「理由」の部分については、事実関係を否定している。

 一方、公取委の「排除措置」として求めたMSSを条件とする値引き販売をやめることと、独禁法に関する社内研修と法務担当者による定期的な監査については受け入れることにした。インテルは「そもそも問題とされる商取引がないため、排除措置に従ったとしても、今後も競争力のある価格を顧客に提示できる」と判断した。審判は長引くと「2~3年かかることもある」(公取委)ため、国内パソコンメーカーなどに配慮し、公取委との争いを避けるのも大きな理由だ。インテルの日本市場における強さは変わらないようだ。

 日本AMDは4月1日、「インテルが公正取引委員会の排除勧告を応諾する決断を下したのは方向性としては正しいが、自社の違法行為に対する責任を認めようとせず、また顧客や消費者に選択の自由が与えられている市場こそが最良の競争環境であることも認めなかったのは遺憾だ。AMDは日本以外でもインテルによる反競争的行為がないかどうか、各国の当局が十分に監視することを期待する」というコメントを発表している。

今井 俊之=日経コンピュータ