NECは今年9月までに、全社でIP電話を導入する。対象は、社員2万3000人に一部の関連会社社員を加えた3万人。その8割は、電話機の代わりに、パソコン上で動作するIP電話用ソフト(ソフトフォン)を利用する予定だ。さらに、同社が開発しNTTドコモが販売するFOMA/無線LANのデュアルバンド携帯電話機「FOMA N900iL」も1万台以上導入する。IP電話の導入事例としては、国内で最大規模になる。

 同社は一連の取り組みを「全社ブロードバンドオフィス化プロジェクト」と呼ぶ。既に、東京都港区にある本社ビルや神奈川県川崎市の玉川事業所など、複数の拠点の8400回線分の電話機をIP電話に切り替えた。

 顧客対応が必要な一部の部署では固定電話機を残すものの、大半の部署の電話機はソフトフォンに切り替える。3月23日の発表会では、プロセス改革推進本部の岡田裕行支配人が「単純な音声通話だけでなく、テレビ会議やプレゼンス(状態確認)などの機能を活用しやすいため」とソフトフォン導入の理由を説明した。

 例えば、ソフトフォンを使って内線通話している時、資料を見せる必要が生じたら、通話を切らずにそのままビデオ会議を立ち上げて資料を見せ合うといった使い方を想定している。

 プレゼンスについては、相手のパソコンの稼働状態を監視するといった方法で在席確認する。相手がN900iLを持っている場合は、どの無線LANのアクセス・ポイントに近いかを検出することで、大まかな位置を把握できる。会議室にいることが分かれば、連絡することは控えるといった使い方が可能だ。ソフトフォンにかかってきた電話をN900iLに転送するようにも設定できる。

 NECは、同社製の「StarOffice21/コミュニケーションポータル」をソフトフォンとして使う。このソフトは、音声通話機能に加え、電子会議ソフト「コミュニケーションドア」との連携機能やプレゼンス機能を備える。社外に対しては5月23日に出荷する予定で、価格は50ユーザーの場合430万円から。

本間 純=日経コンピュータ