EMCのマイラム上級副社長 「米ベリタスソフトウェアのシェアを奪い、エンタープライズ向けソフトウエア・ベンダーとしてトップ5入りを目指す」。米EMCでソフトウエア・グループの上級副社長兼CMO(チーフ・マーケティング・オフィサ)を務めるデビッド・マイラム氏(写真)はこう宣言する。

 EMCは現在、ソフトウエア・ライセンスと保守による売上を合わせて、エンタープライズ向けソフト・ベンダーとして世界第7位。6位は米コンピュータ・アソシエイツ。ベリタスを昨年12月に買収すると発表した米シマンテックが、ベリタスの売上高と合わせて5位につけている。EMCのソフトウエア・グループは、昨年第4四半期(10~12月)に売上高6億3700万ドル、対前年同期比43%の成長率を記録。とはいえ、5位のシマンテックとの差はまだ大きく、2004年第3四半期(7~9月)の売上高を比べると約15億ドルの開きがある。

 そこでEMCが力を入れているのは、ベリタスの顧客に対する販売攻勢。米国では今年1月から、ベリタスの顧客に向けて「Safe Switch」と呼ぶ移行キャンペーンを実施している。同キャンペーンは、ベリタスからEMC製品に移行した顧客に対して、料金を割り引いたり、コンサルティングを提供するもの。マイラム氏によれば、EMCはベリタスの顧客1万社以上に対してアプローチを始めており、既に60以上のシステムをEMC製ソフトに置き換えたという。

 マイラム氏は、「シマンテックがベリタスを買収したことで、ベリタスの顧客の間でサポート問題などの混乱が生じている」とみる。この機に乗じて、ベリタスのシェアを奪おうというのが狙いだ。EMCのストレージ管理ソフトは、レプリケーションやボリューム管理などの分野ではトップ・シェアを獲得しているが、バックアップ/リカバリ分野ではベリタスの後塵を拝している。

 EMCはシェア確保に向けて、製品の機能強化や新たな企業買収も展開する考えだ。バックアップ/リカバリ・ソフトとして、同社が買収した米レガートシステムズの「NetWorker」の新版を年内をメドに販売する。また、データの重要度に応じてストレージを変えるコンセプト「ILM(Information Lifecycle Management:情報ライフサイクル管理)」の分野で、デジタル・シュレッダーと呼ぶ機能の追加を検討している。アーカイブされたデータの中で保存期間を過ぎたものを完全に消去できるようにする機能を指す。

 日本では、EMCのハイエンド・ストレージ装置を使う企業で、バックアップ・ソフトとしてベリタス製品を採用していることが多い。ただし、日本EMCがSafe Switchキャンペーンを実施するかどうかは決まっていない。

岡本 藍=日経コンピュータ