サン・マイクロシステムズと野村総合研究所(NRI)は3月18日、「アイデンティティ管理」の分野で協業すると発表した。アイデンティティ管理とは、企業内の各種システムへのアクセス権限やユーザー・アカウント情報を一元化し、ユーザーごとに管理する手法やシステムのこと。両社は、アイデンティティ管理の導入を予定する企業に対し、コンサルティングから具体的なシステムの構築までを協力して提供する。
NRIの末永守常務執行役員は、「システム全体として、100億円以上の受注が見込める」と期待する。将来的にはコンサルティング・サービスを、サンの「プロフェッショナルサービス」のメニューに追加して提供する。また、異なるアーキテクチャのシステムを連携させる相互運用技術を共同で開発/検証したり、今後の法的規制を見据えた新製品の開発といった点でも協力する。
アイデンティティ管理のメリットは、個別のユーザーが持つアクセス権限を可視化して、管理しやすくなること。人事異動で役職が変化した場合に、アクセスできるシステムや権限を変更するといった管理が簡単になる。またIDの消し忘れで退職したユーザーがシステムにアクセスできてしまうといった、セキュリティのトラブルを避けやすくなる。
ユーザー側から見ると1回のログイン作業で、すべてのアプリケーションが使えるシングル・サインオンと似ている。ただ、Webベースのアプリケーションだけではなく、メインフレームなどで稼働する既存のシステムまで管理対象を広げる点や、背後にセキュリティ・ポリシーなどと連携して動作するアクセス権限自体の管理システムを持つ点が異なる。
こうしたシステムの導入では、現状のシステムを分析したり、個別の状況に応じて連携のための技術を選択する必要がある。そのためには事前のコンサルティング作業が重要になる、と両社は主張する。「業務を分析し、運用形態まで勘案してからシステムの設計に入る必要がある」(NRIの佐々木慶秀グループマネージャー)。
サンは、Javaで作られたアイデンティティ管理ソフト「Sun Java System Identity Manager」などを持ち、米国で実績を挙げている。この製品を日本で販売するに当たり、NRIの持つコンサルティングのノウハウと実績に目を付けた。ただし、NRIはサン製品の利用に縛られない。「米国で大きな実績を持つサン製品が使えるのは魅力だが、必要なら別の技術を利用する」(NRIの末永常務執行役員)という。
アイデンティティ管理システムの導入費用は、コンサルティングを含めて「約3000万から4000万円」(NRIの佐々木マネージャー)。今回の協力関係により、初年度で両社合計10億円程度の売り上げを目指す。ただし、10億円はアイデンティティ管理だけを切り出した数字。「システム全体の受注としてはこの10倍以上の売り上げが見込める」(末永常務執行役員)という。