「アプリケーションに制限がなく、Pentium4のサーバーで40~200ユーザーを管理できる」。シンクライアント環境構築ソフト「Ardence」を開発・販売する米アーデンス社バイス・プレジデントのマーク・ヨハイ氏(写真)は、同ソフトのメリットを説明する。「セキュリティが向上するため、日本でもコールセンタや政府機関などの組織に売り込みたい」と意気込む。

 アーデンスのシステムはまず、社内LANに接続したサーバーに、パソコンのハードディスクのデータを丸ごと変換したイメージ・ファイルを格納。利用者がパソコン起動すると、LAN経由でサーバーから専用プログラムをダウンロードして実行する。このプログラムでイメージ・ファイルにアクセスし、Windowsを起動する。アプリケーションが動作する際に必要とするソフト部品(DLL)や、環境設定ファイル(INI)、レジストリ情報などがすべてサーバーに置いてあるため、アプリケーションに制限がなく、処理を端末で実行するため、サーバーには高い処理能力が求められない。

 「パソコンからディスクを排除できるので、情報漏洩の心配がない上に、端末の故障率も大幅に下がる」(ヨハイ氏)という。同社の製品は米大手ケーブル・テレビ事業者のタイム・ワーナー・ケーブルがコールセンタに導入したほか、米国防総省やエネルギー省が採用。日本でも東レ・ダウコーニング・シリコーンが利用している。

 ディスクレス端末を利用するシステムは、これまでマイクロソフトのWindows Terminal Serverやシトリックス・システムズ・ジャパンのMetaFrameなどで構築するのが一般的だった。いずれもサーバーでアプリケーションを実行し、その画面イメージのみをネットワーク経由で端末に送信する仕組みだ。だが、この仕組みには課題もある。例えば、利用できないアプリケーションがある、サーバーが大規模になる、といったことだ。Ardenceは独自の仕組みを採用することで、これらの問題を回避した。

 もっとも、このアーキテクチャによる弱点もある。必要なネットワーク帯域が大きくなってしまったのだ。「サーバーで1Gbps、端末には100Mbpsが推奨環境だ」(ヨハイ氏)という。このネットワーク環境さえあれば、OSの起動速度やアプリケーションの実行速度はスタンドアロン型のパソコンと遜色ないという。ただ、外出先でノート・パソコンからアクセスするといった使い方は難しい。

 国内の販売代理店はアディ。導入に際しては1ユーザーあたり3万円のユーザー・ライセンスだけで済む。教育機関の場合1万7000円。

広岡 延隆=日経コンピュータ