NECは3月上旬までに、社内で利用するパソコン8万8000台に、Windows XP Service Pack 2(SP2)を導入した。SP2を導入する際は既存アプリケーションの稼働確認など入念な検証が必要。わずか半年でSP2をこれほど大量の端末に導入した例は珍しい。

 NECのポリシーでは「Windowsのサービスパックは、適用を配布開始から半年以内に完了することになっている」(IT戦略部の真田美穂子マネージャー)。これに従えば、昨年9月2日に配布が始まったSP2は今年2月末までに導入を完了することになる。NECは「SP2導入は、OSのバージョンアップに匹敵するといわれていただけに、アプリケーションの稼働確認で相当苦労すると覚悟していた」と東内章システム運用統括部シニアマネージャーは打ち明ける。

 にもかかわらず、同社がこれまでのポリシー通りのスケジュールでSP2導入を進めた最大の要因は、新規購入するパソコンは昨年10月からすべてがSP2搭載機になること。いつまでもSP2導入を延期していると、新規購入のパソコンは社内システムを利用できなくなる可能性があった。加えて、SP2でOSのセキュリティが大幅に強化されたことへの期待も、決断を後押しした。

 実際に導入作業を開始すると、「拍子抜けするほど、問題は起きなかった」と東内氏はいう。「用意した専用ヘルプデスクにもほとんど問い合わせはなかった」。
 
 とはいえ、NEC社内のパソコンで動くアプリケーションは、全社で共通して使用するアプリケーションだけでも133種類、事業部門が独自運用しているものまで含めれば数千のオーダーに達する。これらの膨大なアプリケーションがSP2で問題なく動作するか漏れなく確認するのは、生易しい作業ではなかった。

 そこでNECは2003年12月の時点で、SP2のベータ版を入手。導入時に問題となりそうな点をあらかじめ分析していた。そのため、昨年9月2日にSP2の正式配布が始まった後、効率的に導入時の注意点を洗い出すことができた。9月末には、社内のアプリケーション開発担当者向けの説明会を開催。説明会に参加できない開発者のために、全国のNECの拠点に説明会の様子をライブ放送したり、ビデオを配布するなど周知に努めた。イントラネットを利用して、アプリケーションの稼働確認状況の情報公開も徹底した。

 こうした取り組みが奏功して、10月末には133のアプリケーションの稼働確認を完了した。11月1日から実際の端末に導入を開始した。ただし、営業やSE部門の一部で、12月末まで導入開始を凍結したところもあった。その部門が利用していた他社製の暗号化機能付きUSBメモリーのSP2対応が、遅れたためだ。

 ただし、実際にSP2を導入する作業は、ユーザーの手に任せるしかない。NECはCAPS(Cyber Attack Protection System)と呼ぶパソコンの構成情報を管理したり、OSの修正ファイル適用などを支援する社内システムを利用して、SP2導入状況を管理した。今年2月からは、CAPSの機能を利用してSP2を導入していないユーザーの画面に、導入を促すメッセージを表示した。この結果、「お客様と環境を合わせなければならない一部の開発用端末や、SP2未対応のCADソフトを動かす端末を除き、ほぼすべてのパソコンにSP2の導入を完了した」(アウトソーシング・Eサービス構築運営本部の黒崎時廣ITインフラサービスグループ マネージャー)という。

広岡 延隆=日経コンピュータ