Excel専用のアプリケーション開発環境、「StiLL」の新バージョンが6月にも登場する。新バージョンの「7.5」では、一種のWebアプリケーション・サーバー・ソフトを追加。同時に、StiLLで開発したクライアントにWebで使うHTTPのクライアント機能を持たせる。これにより、ExcelをクライアントにしたWeb3階層システムを構築できるようにする。StiLLを販売するアイエルアイ総合研究所の内藤慶一代表は、「Excelを使ったリッチ・クライアント・アプリケーションを実現できる」と説明する。
StiLLは、いわばExcelのアドオン・ソフト。Excelのメニュー・バーに追加されたStiLL専用のメニューから画面の部品を選択し、Excelのシート上に配置していくことで、業務アプリケーションを開発できる。大塚製薬や豊田自動織機、日本デルモンテなどが、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)のサブシステム、EDI(電子データ交換)システム、営業管理システムなどの開発に使っている。
新版の目玉は、新たに用意するサーバー側ソフト。Webサーバーにアドオンして利用するミドルウエアで、クライアント側で稼働するStiLLアプリケーションと、データベース・サーバーとのやり取りを仲介する。まず最初に、クライアントはWebサーバー上に置いたStiLLのアプリケーション(実体としてはExcelファイル)をダウンロードして実行する。クライアントで動作するStiLLのアプリケーションで更新したデータを、HTTP(厳密にはHTTPを拡張したプロトコルのWebDAVを使う)でStiLLのサーバー側ソフトに送信すると、サーバー側ソフトがデータベースを更新する。従来版では、インターネットを介したアプリケーションは実現できなかった。
アイエルアイ総合研究所の内藤代表によると、ある顧客はすでにStiLLの最新バージョンのプロトタイプを使って、モバイル営業支援システムの開発を進めている。基本的にはスタンドアロンで使うが、営業日報の提出や顧客データの参照・更新など、必要に応じてインターネットに接続し、サーバー側のデータを更新する。「Excelを動作環境に使っているStiLLは、表やグラフを駆使したアプリケーションが得意。StiLLの最新版を使うことで、Excelの特性を生かしたWebアプリケーションを構築できる」(同氏)。
価格は開発環境が1ライセンス15万円、実行環境が1ライセンス9800円。7.5で新たに用意するサーバー側ソフトのライセンスは100万円から150万円を予定している。
なお、マイクロソフトはオフィス・スイート製品「Office System」をWebアプリケーションのクライアントとして使えるとしている。例えばExcelでは、ExcelのファイルからXMLデータをエクスポート/インポートする機能や「Visual Studio .NET」などの開発ツールで開発したプログラムとの連携機能を追加している。ただし実際にWebアプリケーションのクライアントとして使うにはコーディングを必要とする。